Metempsychosis
in Tales of the Abyss

予期せぬ寄り道

ローテルロー橋へ向かう途中、防衛用の機雷に接触してしまった一行は、修理の為に寄港できる一番近い港、ケテルブルク港へと向かう事となった。



「失礼。旅券と船籍を確認したい」
「私はマルクト軍第三師団所属、ジェイド・カーティス大佐だ」

見るからにマルクト戦艦と解るものの、寄港予定にない戦艦に兵が取り調べようとする。

しかし先手を打って名乗ったジェイドの名を聞き、サッと顔色を変えた。

「し……失礼致しました。しかし大佐はアクゼリュスで……」
「それについては極秘事項だ。任務遂行中、船の機関部が故障したので立ち寄った。事情説明は知事のオズボーン子爵へ行う。艦内の臨検は自由にして構わない」

そこまで言い切って、ジェイドはふと独り言のように「丁度良いか…」と呟く。

「艦内にはアクゼリュスの難民も乗っている。彼等の受け入れも共に要請する為、指示が出され次第迅速な対応を頼む」
「! 了解しました。街までご案内しましょうか?」
「いや、結構だ。私はここ出身なのでな。地理はわかっている」
「分かりました。それでは失礼します」

敬礼をして去る兵を見送って、ルークがちょっとした驚きを露わにジェイドを見る。

「へー、ジェイドってここの生まれなんだ」

しかし、それに返されたジェイドの返事は「……まぁ、ね」と酷く曖昧なもの。

「ジェイド?」
「何でもありませんよ」

不思議に思ったリスティアータに答えた時には普通に戻っていたが。

「修理はどうするんだ?」
「それも知事に報告して頼みましょう」
「よし、じゃあケテルブルクへ急ごう」



ケテルブルク港から歩く事数時間、絶えず降り続いているかのような雪に包まれたケテルブルクの街並みに足を踏み入れた。

その頃にはほぼ全員が慣れない雪道に体力を奪われ、溶けた雪にずぶ濡れとなっていた。

何故全員でないのかと言われれば、当然ケテルブルク出身と言ったジェイドと、浮遊椅子に座ったリスティアータとイオンだ。

そうは言いつつも、椅子に座った2人の濡れ具合は、皆と比べてあまりにも軽い。

その理由は、にょきっと椅子の背もたれから生えた(、、、)傘のお陰。

恐らくはディストの気遣いか何かなのだろうが、ちょっと微妙だとアニスを筆頭に皆が思った。



どんなに疲れていようと休むのは知事への挨拶と事情説明を済ませてからと、自分達を叱咤して知事邸宅を探す。

その途中、辺りの別荘より一際大きな屋敷を見つけ、アニスがキラッキラと瞳を輝かせる。

「は〜。すっごいお屋敷vここの人と結婚した〜いv」
「確かまだ独身でしたよ。三十は過ぎてますが」

はっちゃけたノリに続いたジェイドからの情報に、アニスは一瞬固まった。

三十歳過ぎてて独身。

加えて何となく金持ちっぽい人物が目の前にいるではありませんか。

「え。もしかしてここ大佐の家とか?だったら大佐でもいいなぁv」
「そうだとしてもお断りですv」

にぃっこりと素敵な似非笑顔と言う名の外面で一刀両断された。

「でもここの持ち主なら喜ぶかも知れませんよ。女性ならなんでもいい人ですから」

性別が女なら誰でも。

それは年齢が上だろうが下だろうが気にしないという意味としか取りようがない。

一番のハンデであろうアニスの年齢を気にしない金持ち。

この上ない好物件に、アニスはぐっと真剣な顔になった。

「誰ですか」

目がマジです、アニスさん。

対して一語一句弾むようにしてジェイドは答えた。

「ピオニー陛下です」
「ひゃっほー♪玉の輿ぃv」
「まぁ、良かったわね、アニス」
「リスティアータ様!ありがとうございま〜す♪」

まるでもう決定したかのように大喜びのアニス。

のほほんと祝福するリスティアータがさらにそれを増長させていたりする。

ただ豪邸の持ち主を聞いただけと気づいているのかいないのか。

多分気にしてないんだろうなと、期せずして2人を除く全員が思った。




執筆 20090517




あとがき

スムーズに話を進めると中途半端になりそうだったので、ピオニー陛下の屋敷に寄り道してみました。

陛下の名前を出す度に、登場の時が刻一刻と近づいてるって感じがして、無駄に興奮してきます。

うん。

ただの変態だよね。

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