重い空気 ーside Guyー
空気が、えらく重い。
ザオ砂漠の砂に足を取られないように意識して進みながら、俺はチラッと隣を歩くルークの様子を窺った。
表面的には砂漠の暑さにぐったりしているようだが、内面的にはどうだろうか。
バチカルの廃工場を抜けた直後の事もあるし、決して穏やかではないだろうが。
拿捕されていたタルタロスに乗せられようとしているイオンを見つけ、真っ先にルークは駆け出した。
その場に見当たらなかったリスティアータは、既に艦内に乗せられてしまっているのだろう。
慌ててルークの後を俺も追ったが、ルークと切り結んだ紅の髪の男、鮮血のアッシュの顔を見て、思わず足を止めた。
------…同じ顔が、お互いを見ていた。
その時俺の受けた衝撃とルークの受けた衝撃は、比べ物にならないだろう。
それこそ、今まで生きてきた世界が全てひっくり返るくらい。
俺だって目の前に自分と同じ顔の奴が現れたらと思うとぞっとする。
そう言えば、バチカル城を出た時からだったか、始終考え込むみたいに上の空になる事が増えた。
かと思えば、癇癪を起こしたように髪をがしがし掻き毟ったり。
とにかく挙動不審なように思う。
合流した当初と似たような感じだが、直接聞いてみても答えが返ってくる事はなかった。
やけに慌ててたから、何か隠している事は確実だな。
それから……
俺は砂漠を歩く面々を確認するように首を巡らせた。
しかし、その中に彼女の姿は、いや、彼女の姿だけが、ない。
オアシスに到着した途端、頭痛に襲われたルークが言うに、アッシュが自分達はザオ遺跡にいると言ってきたらしい。
半信半疑ながらも、他に手掛かりもないのだからと、ザオ遺跡に向かった。
1日掛けて辿り着いたザオ遺跡の最深部で、漸く六神将達とイオンの姿を見つける。
しかし、そこにリスティアータの姿はなく、戦闘の末に取り戻す事が出来たのはイオンだけだった。
そうして今、ケセドニアに向かって歩いている訳だが、空気が重い。
やたらと重い。
とにかく重い。
たった1人抜けただけで、こんなにも空気が重苦しくなるものか。
それだけリスティアータという人間の存在が大きかったのだと、改めて実感させられた。
別に取り分け自分から話すような事もなく、穏やかに微笑んでいる印象ばかりのリスティアータだが、いるだけで俺も含めてかなり和んでいたようだ。
一応、和み用としてイオンがクロを預かっていたようだが、それは違うだろ、とツッコまずにはいられない。
いや、和むのは違わないんだが、何か違う。
違うよな?
………何か段々自信無くなってきたな。
執筆 20090425
プラウザバックでお戻り下さい。