Metempsychosis
in Tales of the Abyss

親善大使 ーside Lukeー

漸く帰ってきた自分の邸。

疲れを癒すためにぐっすりと眠った翌朝、メイドの言葉に目が点になった。

登城しろ?

外に出てもいいって事か?

散々今まで邸からは一歩も出るなって言われてきたのに?

……何となく、気に入らねぇ。

そう思いながらも支度をしてメシを喰って邸を出た。



城に入ってすぐ、あのモースとかいう奴とティアが話しているのを見かけた。

何でか知らねーけど俺の名前が出たから声を掛けたら、何かモースの奴、慌てて謁見の間に行っちまった。

何か嫌な感じだ。

でも伯父上に呼ばれてるし、仕方なく俺も謁見の間に向かう。

そこには伯父上と父上、ジェイドと大臣が先にいた。

で、話を聞いていたら、伯父上達は俺を親善大使に任命するって言い出した。

意味分かんねぇ。

何でいきなり俺が親善大使なんだ。

すぐに断ったら、今度はヴァン師匠の話になった。

俺が親善大使になるなら、ヴァン師匠を解放する。

交換条件ってやつらしい。

そう言われたけど、やっぱ意味わかんねぇから嫌だ。

俺より向いてる奴なんていくらでもいる筈だろ。

確かにヴァン師匠を解放して欲しいと思うけど、疑いが晴れれば解放されるって事じゃねぇか。

そう言ったら、伯父上が「俺じゃでなければならない意味がある」とか言い出した。

なんでも、昔降ってきた第六譜石の一部に、俺がアクゼリュスに向かう事が詠まれてるんだと。

伯父上が、俺を『選ばれた若者』って言った。

ヴァン師匠も、連絡船でそう言っていた。

超振動って、俺だけが使える力が、俺を英雄にするって。

そうすれば、自由になれるって。

その事を思い出していたら、父上まで英雄になる時だって言い出した。

そもそも、『英雄』って何なんだよ…?

それに聞いてれば、俺が親善大使になんのはもう決まってんじゃねぇか。

そう思ったら、何かムカついてきた。

だから言ってやったんだ。

「俺は親善大使が何をやんのかなんて知らねー。恥かいてもいいなら好きにすればいいだろ」

って。

ついでにジェイドに「あんたはいいのかよ?」って訊いたら、ジェイドの奴、「親善大使の人選に私が口を出す訳にいきませんから」とか言って肩を竦めやがった。

それって「ホントは嫌だけど仕方ない」って意味だろ。わざとらしい態度にもムカついたけど、イヤミな台詞にもムカつく。

でも、何かジェイドのイヤミに慣れてきた気がするのが一番嫌だった。



伯父上との謁見のあと、俺はヴァン師匠に会いに行った。

2人っきりになった時、ヴァン師匠にいきなり神託の盾騎士団に誘われて、俺はマジで驚いた。

そして何で俺が親善大使に選ばれたのか、本当の理由を教えられた。

俺がアクゼリュスの人達を移動させた事が、戦争を起こすキッカケになる。

預言の続きにはそう詠まれてる。

何で俺がって思った。

でも、今までユリアの預言は一度も外れた事はないって言うし…

でも、だからってアクゼリュスを放っとく訳にもいかない筈だ。

そしたら師匠が、預言に詠まれてるのとは反対に、住民を動かさずに障気を無くせばいいって言い出した。

超振動を使えば、障気を中和出来るからって。

どうしてか訊いたけど、今は時間がなくて説明出来ないって、教えて貰えなかった。

俺は正直迷った。

ヴァン師匠の言葉を信じてない訳じゃねぇけど、俺は超振動なんて使った事ないんだぜ。

いきなり使って、連絡船の時みたいな事になったら、それこそヤバい。

そう言ったら、ヴァン師匠に「私を信じろ」って言われて、頷いちまった。

ちゃんと考えずに頷いた事で、頭ん中にリスティアータの言葉が浮かぶ。

…ちゃんとアクゼリュスに向かいながら考えねぇと。

師匠は俺にダアトに亡命するように言った。

そう言えばさっきも神託の盾騎士団に入らないかって言ってたよな。

でも前から不思議だったんだ。

なんで師匠は俺にこんな親身になってくれるのか。

それを訊いたら、記憶を失う前の俺が、「一緒にダアトに行きたい」って言ったかららしい。

だから7年前に俺を誘拐したんだって。

俺を誘拐したのはマルクトじゃなくて、師匠だったんだ。

その途中で何かあって、俺が記憶を無くしちまった。何か実感湧かねぇのは、俺が記憶障害だからなのか?

なんにしろ、ヴァン師匠にこの事は誰にも言うなって口止めされたし、超振動の事なんてそう簡単に話せねぇ。

ジェイドが言ってたよな。

超振動は兵器に転用出来るから、みんな狙ってるって。

つまりは、俺が一人で考えなきゃいけないって事か…。




執筆 20090425

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