Metempsychosis
in Tales of the Abyss

到着

「お初にお目にかかります。キムラスカ・ランバルディア王国軍第一師団師団長のゴールドバーグです。この度は無事のご帰国、おめでとうございます」

バチカルの港に降り立った一行は、キムラスカの軍服に身を包んだ如何にも軍人然とした男性、ゴールドバーグに出迎えられた。

「ご苦労」
「アルマンダイン伯爵より鳩が届きました。マルクト帝国から和平の使者が同行しておられるとか」
「ローレライ教団導師イオンです。マルクト帝国皇帝ピオニー九世陛下に請われ、親書をお持ちしました。国王インゴベルト六世陛下にお取り次ぎ願えますか?」
「無論です。皆様の事はこのセシル将軍が責任を持って城にお連れします」

ルークの労いを受けたゴールドバーグが早速切り出すと、イオンがルークの隣に並び出て名乗る。

そして導師の正式な要請に頷いたゴールドバーグは、自身より一歩後方に控えていた女性軍人を指し示した。

「セシル少将であります。よろしくお願い致します」

凛とした印象に違わぬ動作で名乗った女性、セシル少将に、意外な反応を見せた者がいた。

「どうかしましたか?」
「お、いや私は……ガイと言います。ルーク様の使用人です」一瞬ではあっても、見るからにギクリとした顔になったガイにセシル少将が訊けば、取り繕うように名乗る。

内心ではかなり慌てていたことだろう。

しかし、一見では解らないガイの焦りに気づく事もなく、ティア、アニス、と順に名乗っていく。

「ローレライ教団神託の盾騎士団情報部第一小隊所属、ティア・グランツ響長であります」
「ローレライ教団神託の盾騎士団導師守護役所属、アニス・タトリン奏長です」
「マルクト帝国軍第三師団師団長、ジェイド・カーティス大佐です。陛下の名代として参りました」

ジェイドの纏った蒼い軍服から、名乗るまでもなくマルクトの者と認識していたのだろうが、その名を聞いた瞬間、ゴールドバーグは勿論、セシル少将の顔色が変わった。

「貴公があのジェイド・カーティス……!」
「ケセドニア北部の戦いでは、セシル将軍に痛い思いをさせられました」
「ご冗談を。…私の軍はほぼ壊滅でした」

驚愕も露わに声を漏らしたセシル少将にジェイドが言葉を返すと、誰がどう聞いても社交辞令(もしくは嫌味)の内容に、彼女は苦く笑う。

と、最後に名乗っていないリスティアータに2人の視線が向けられると、彼女はにこりと微笑んだ。

「お初にお目にかかります。私はリスティアータと呼ばれている者です」
「「!!」」

ーーーーーー…リスティアータ

それを聞いた瞬間、2人の軍人は目を見開いた。

まさに驚愕と言って相違ないだろう。

その驚きは、預言を遵守する傾向の強いキムラスカにとって、もしかしたら導師であるイオン以上に尊い、崇高な存在と認識されていたからか。

それとも、実際目の当たりにしたリスティアータの印象が、あまりに【柔らか】だったからか。

理由はともかく、何とか衝撃から脱したらしいゴールドバーグは、自分を落ち着けるように蓄えられた白い口髭を撫でた。

「皇帝の懐刀と名高い大佐が名代として来られた上、リスティアータ様までいらっしゃるとは。なるほど、マルクトも本気という訳ですか」
「あら」
「国境の緊張状態がホド戦争開戦時より厳しい今、本気にならざるを得ません」
「仰る通りだ。ではルーク様は私どもバチカル守備隊とご自宅へ…」

何か余計な事を言いそうなリスティアータを素早くさり気なく遮ったジェイドの真面目な返答に同意したゴールドバーグがルークを別行動へと促すが、ルークはそれを遮る。

「待ってくれ」

不思議そうにするゴールドバーグに、ルークは更に言った。

「俺はイオンに伯父上への取り次ぎを頼まれてるんだ。俺も城に行く」
「ありがとう。心強いです」
「べ、別に…。約束したからな」

あれだけ早く帰りたがっていたルークから出た言葉にイオンが真っ直ぐな感謝の言葉を送る。

それを受けてルークは照れくさそうにぷいっと顔を背けてしまったが。

「承知しました。ならば公爵への使いをセシル将軍に頼みましょう。セシル将軍、行ってくれるか?」
「了解です」

ゴールドバーグの言葉を受けるとセシル少将は敬礼を返し、港から一味先に去っていった。

「ではルーク、案内をお願いします」
「お、おお…」

そうイオンに言われたルークは、先程までとは打って変わって気まずそうに頬を掻いた。




執筆 20090417

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