Metempsychosis
in Tales of the Abyss

タルロウX

追撃は終わっていなかった。

襲撃を知らせるキムラスカ兵に続き部屋に侵入してきた神託の盾兵の姿に、全員がそれを悟る。

何にせよ、早く船橋に向かわなければと部屋を飛び出した。

流石に戦闘ともなれば真面目なものの、何故か面倒臭そうなジェイド様子からか、あまり緊張感はない。

そんな一行が船外の通路に近づいた時、男性の叫び声を聞きつけ、急いで外へと飛び出せば、

「このタルロウX様が頂いたズラ!」

ガチャガチャとした何となく人型っぽい譜業が男性から何かを奪った所だった。

「その譜石を返せ!」
「返さないズラ。実験に使っちゃうズラ」

ご丁寧にもタルロウXと名乗った譜業は、馬鹿にするように男性から逃げ出す。

一応ルークが男性に何事かと訊くと、譜石の欠片を奪われてしまったと言う。

そんな中、更に面倒臭そうな色を強くしたジェイドがさめざめと深い溜息を吐いた。

「あの趣味の悪いロボット、やはりあれの仕業ですか…」
「大佐、心当たりがあるんですか?」
「残念ながら、少しだけ」

少し意外そうにティアが訊くと、ジェイドが肩を竦めて答える。

「まぁ、譜石の欠片は貴重な資源です。取り戻しましょう」

そうして激しく揺れる船上でタルロウXを追った一行だったが、タルロウXはものの数分で捕まった。

「動きノロ過ぎじゃね?」

取り押さえたルークの率直な感想に、タルロウXは怒ったようにジタバタと暴れる。

「きっそー!邪魔すんなズラ!」

喧しく暴れるそれにジェイドが引導を渡してやろうと思った頃、タルロウXは「あっ!」と声を上げた。

その目?が向いている先にはリスティアータが。

「リスティアータ様ズラ!助けてズラー!コイツらがイジメるズラー!」

あろう事か助けを求めるタルロウXに、全員がカチンと来た瞬間だった。

しかもイジメるなどと、ロボットながら良く言えたものである。

そんな中、名指しを受けたリスティアータは、きょとりと首を傾げていた。

「あら?私、あなたとお会いした事あったかしら?」
「ないズラー!でもご主人様がいつも話してるズラ!」
「図々しい奴だな…」

会った事もない相手に助けを求めるなんて、と、ガイはもう呆れ顔だ。

と、リスティアータは少し顔を厳しくして言った。

「他人の物を盗ってはいけないわ。ちゃんと返して謝りましょう?」
「えーズラー」
「えーじゃありません」

ちっとも怖くない顔でめっと叱られて、タルロウXは暫く考えてから、ルークに譜石を差し出す。

「仕方ないズラ。リスティアータ様に感謝するズラよ!」

…なんて余計な言葉も添えて。

当然ムカッとしたルークが本当にイジメてやろうとした時。

「おーっと失礼」

ジェイドがタルロウXの頭をガシッと掴んでポーンと放った。

向かう先は、広い広い大海原。

「「「「「「あ」」」」」」
「?」

譜石の持ち主も含めた全員が思わず声を出していた。

見えないリスティアータだけが首を傾げる。

直後、バシャンっと音が。

………落ちた。

「お、おい…ジェイド?アイツ」
「いやぁ、譜石が無事返ってきて良かったですねぇ」
「そうですね。あら?あの子はどこに行ったんでしょう?」
「譜石を渡してすたこらと逃げて行きましたよ」

ルークを遮って清々しく宣ったジェイドに、全員が引いた。

心から晴れやかな笑顔のジェイド…恐すぎる。

それを知らないリスティアータがのほほんと訊ねれば、これまたジェイドが笑顔で答えた。

その遥か後方で「ギャー、ズラー!」なんて叫びが響いていたが、リスティアータには残念ながら届かなかった。



執筆 20090412




あとがき

聞こえていたら心配くらいはされたかもしれないのにね(笑)

短いけどコミカルテイストな話は楽しかったです。
次もきっと、寧ろ絶対にコミカル路線へゴーゴーでしょうね(笑)

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