Metempsychosis
in Tales of Graces f

Breiartig

フィエラは、意識が浮上する片隅で、僅かに顔を顰めた。
なんと言えばいいのか、とぼんやり考えて、ぽつりと浮かんだ答えは、至って単純。

……………くさい。

そう、ただくさいのだ。
激臭と言う程までに強いにおいではないが、鼻の奥にいつまでもこびり付いているような、そんなにおい。

それが少し不快で、フィエラはうっそりと目を開けた。
のだが。

「………あら?」

寝起きの彼女が見たものは、死の世界かと思うような、おどろおどろしい空間と、その中にぽつんとある小屋だった。

「目が覚めたか?」
「は、はい…」

目を覚ましたフィエラに気づいたマリクに辛うじて返事をするが、きょときょとと瞬く瞳は、現状は全く把握出来ておりません。と言っている。
辺りを見回すフィエラに、今目指している小屋に着いたら説明すると言うマリク。
と、フィエラ起きた事に気づいたアスベル達が歩みを止めて近寄る。

「フィエラさん、目を覚ましたんですね」
「ええ」
「フィエラ、おはよう」
「おっはよ〜」
「朝じゃないだろ…」
「ふふふ、おはよう」
「フィエラさん。気分はどうですか?痛い所とか、ありませんか?」
「?…ええと…大丈夫。どこも痛くないし、気分も悪くないわ」
「そうですか。よかった」

何故体調を訊かれるのかに首を傾げつつも大丈夫と返せば、ほっとしたシェリアは、気分が悪くなったらすぐに呼んで下さいね、と言って戻る。

はて?と思う。

同行し始めてから、シェリアはフィエラの体調を良く気に掛けてくれるのだ。
それはもう良く良く。
もちろん他の面々(特に女の子)もそうなのだが、フィエラに対するそれは、更に輪を掛けて心配してくれているように思う。
一緒にいる期間が皆より短い為、という事もあるかもしれないが、それにしては…と。

「どうかしたのか?」
「あ、はい…。シェリアが私をとっても気に掛けてくれるんですが、何故なのかしら?と思っていたんです」

そう言えば、マリクは納得したように苦笑した。

「聞いた話では、シェリアは生まれつき体が弱く、満足に遊べなかったらしい」
「まぁ…」
「どこかで重ねているのだろうな。昔の自分とフィエラを」

それを訊けばフィエラも納得出来る。
小一時間歩いただけで毎回倒れるフィエラは、確かに子供の時のシェリアと重なる点は多いだろう。
さぞかし心臓に悪い思いをさせているに違いない。
自分でもどうしようもない事だけに、へにゃりと眉を下げるしかないフィエラに、マリクは気にするなと言って笑った。




執筆 20110620

breiartig = どろどろの

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