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月曜朝の満員電車は一段と凄まじい混雑っぷりだ。
汗臭いオヤジ。香水臭いオンナ。音楽駄々漏れのガキ。社会人になって三年経つが、この通勤地獄には到底順応できそうもない。辟易するような蒸し暑い車両の中で肩を押し合いながら深く溜め息をついた。

『ドアが閉まります、ご注意ください』

アナウンスと同時に発車のベルが鳴り響く。異変を感じたのは、それから間もなくのことだった。

(ッ……!?)

ケツの辺りに何かがサワサワと触れている。電車が動き出した反動で誰かの鞄が当たったのかもしれない。初めはそう思ったがその動きは一向に退く気配がない。それどころか明らかにそれは人の手で、あろうことか撫で始めたのだ。

(このエロオヤジが……! 女と間違ってんじゃねぇっての……っ)

身体を揺すって軽く手を払いのけると、今度はガッチリと尻肉を掴み大胆に揉み回そうとする。

(ウソだろ……マジで気付いてねぇのかよ……)

顔を引き攣らせながら再び身をよじろうとする俺に隣のサラリーマンが迷惑そうに咳払いする。

(おい気付けって! 痴漢だよ痴漢……! 頼むから後ろのクソ野郎をなんとかしてくれよ!)

今にも大声で叫びたかったが、不幸にも目の前には吊り革に掴まって立つ華奢な女性の姿があった。
この状況で下手に動けば逆に怪しまれる可能性すらある。運良く信じてもらえたところで、周囲からは"男に痴漢された男"という不名誉なレッテルを貼られることには違いない。どん底に突き落とされたような気分だった。額に汗を滲ませる背後で、男がくすっと笑みを洩らす。

「……君、こういうのは初めてかい? 男のくせにいいお尻してるじゃないか」

車体が揺れる騒音に紛れて男が静かに囁いてくる。

(こ、こいつ……っ、俺が男だってわかってて……!?)

男の吐息が首筋に吹きかけられ、身の毛もよだつ嫌悪感に身体を強張らせる。

「ふふ……おじさんのこと気持ち悪いと思っているんだろう? たまらないなぁ、そうやって蔑まれるとおじさんゾクゾクしちゃうよ」
「……っ」

男がするっと腰に片手を回す。スーツの上から手のひらを押し当て、慣れた手つきで股間を弄り始める。

(っ、野郎が野郎触って何が楽しいんだよ……! いい加減に……ッ、!?)

股間を触られながら再びケツに当たる違和感。思わず変な声が出そうになるのをギリギリ喉元で押し殺す。おそるおそる視線を落とすと、勘違いであって欲しいという願いも虚しく嫌な予感は的中してしまう。

「ひっ……」
「おじさんのチ〇ポ、君の手で気持ち良くしてくれるかな?」

ぎゅうぎゅうに押し合う車内で男は股間のチャックを開け、取り出したペニスを腰の辺りにすりすりと擦り付けてくる。よほど慣れているのか動きに微塵の躊躇もない。俺の手を掴み強引にそれを握らせる。

(じょ、冗談だろ!? こんなとこで……っ)

「はぁはぁ……もうこんなに硬くなってるのわかるかい……? 君のものだと思って、オナニーする時みたいに優しく触ってほしいな」
「……ッ……」

一瞬このまま握り潰してやろうかと、握らされた手に無意識に力を込めると男がすかさず囁いてくる。

「いいのかなぁ? 君がおじんさんのチ〇ポ扱くところ皆に見られちゃっても。どっちが痴漢に見えるだろうね? ふふふ」
「っ……くそ……!」

(降りたら警察突き出してやるから覚えとけよ……っ)

屈辱感に苛まれながらも必死でそれをこらえ、悪寒に震える唇をきつく噛み締める。無理矢理ペニスを握らされている手の上に被せるように男が手を添え、小刻みに動かす。

「君の手は温かいなぁ……はぁ……っ、気持ちいいよぉ……」

(気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い……! 何で俺がこんなことさせられてんだよ……っ)

手のひらに包まれた男のペニスは一段と熱を帯び、俺の手の中で硬さを増していく。その生々しい感触に吐き気がした。

「はぁ…っ…こんな若い子に触ってもらえるなんておじさん感激だよ。お礼に君のことも気持ちよくしてあげるからね……」
「ぅ…あ……ッ」

股間を上下に擦るように揉まれ不覚にもびくんと身体が揺れる。どんなに拒絶しても股間だけは正直だ。情けないほど反応してしまう。

「ふふ……若い子は元気が良くて羨ましいよ」

(嘘だ……! 違う、こんなのただの生理現象だろ……っ)

「君、これから仕事かい? スーツ汚しちゃ悪いなぁ」
「なっ……」

言っている間にもベルトが外され、緩んだ腹部の隙間からモゾモゾと手探りに忍び込んでくる。強引に布をかき分けてペニスまで辿り着くと、がっちり掴まれてしまう。ひんやりした感触に腰が小さく跳ねる。

「う……っ……!」
「おっと。おじさんのチ〇ポから手を離しちゃだめだよ? ちゃんと握っていてくれないとうっかり君の可愛いお尻に挿れてしまいそうだからねぇ」
「嫌…っだ……、は……くそ……ッ」

(ケツにぶち込まれるとか冗談じゃねぇ……っ、耐えろ……耐えるんだ俺ぇ……!)

金玉のほうまでしつこく揉みほぐされ、条件反射的にビクンビクンと勃起を繰り返す。先端から熱いものが滲み出てくるのが感覚でわかる。

「ふふ、ぬるぬるしてきたよぉ……ここが電車じゃなかったらおじさんがしゃぶってあげるのに」
「ぃ……あっ……」

(ヤバイ……ヤバイヤバイ……っ、何感じてんだよ!? あり得ねぇだろこんな……っひぁっ……)

緩急つけた動きで竿を擦り、溢れてくる汁を塗りたくるように亀頭を刺激されて強い快感が押し寄せてくる。吐息を抑えることに必死で男の動きに気付いていなかった。突然襲ってきた鋭い刺激に目を見開く。

「う゛……っぁ……ッ!?」

(嘘だろ―――!? 指…、入って……ッ)

初めての衝撃に息が止まる。男がケツの穴に指を突っ込んでいたのだ。狭いところを無理矢理抉じ開けるように壁を押し拡げてめり込んでくる。

「ここをグチュグチュしてあげるとねぇ、み〜んな女の子の顔になっちゃうんだよ。おじさん何人も女の子にしてきたからわかるんだ。君は間違いなく素質があるよ」
「は……っ、あ……ぁ゛……っ」

(やめ…ろ……っ、ぅう゛…あ…ッ……そこ…っ、弄、んな…ぁッ……いや…だ……っ)

指がずぽずぽ出入りして腹の中を掻き回すみたいに腸壁を抉り上げる。今にも吐きそうなほど気持ち悪いのに、身体は自分のものじゃないみたいに熱く火照って快感を得ようとしている。口をパクパクしながら必死で酸素を取り込む。

「ほら……お尻がだんだん柔らかくなってきた。二本も入っちゃうよぉ」
「ぁ゛っ…う……あ゛……ッ…うぅ……ぅ……っ」
「おま〇こみたいにぎゅうっておじさんの指を締め付けてくるね……はぁ……ペロペロしたかったなぁ」

入り口がほぐれてさっきよりも指の滑りが良くなったのか出し入れする動きが速くなっていく。指先が奥に当たるとペニスがぴくぴく脈打って勝手に腰が動いてしまう。
男は少し折り曲げた指で中をぐちゃぐちゃに掻き回しながら、パンパンに勃起した俺のペニスを激しく擦り上げた。

「ぁ゛っ…ぐッ……! あ゛ひっ……!」

(何だよ、これ……っ気持ち良すぎて……頭、おかしくなる……っ……ん゛ひっ…あ゛ッ、だめ…だ……っ、も……俺……っあ゛ぁあっ……)

「はぁはぁ……おじさんの手にたっぷり出してごらん。おじさんも君の手の中に注いであげるから……一緒に気持ちよくなろう……?」
「や……っ、は……う゛っ……」

(そんな…っ、ぁ゛ッ、イキたく…ないのに…っ……あ゛あぁっ、も…出る……ッ、むり……っ、逝かされる…う゛ぅぅっ……〜〜〜ッ!)

男の手によって包まれたペニスの先からどろっとした精液が次々と溢れ出てくる。同時に俺の手の中にもぬめぬめした生温かいものが広がった。

『間もなく駅に到着します。お出口は左側です。お降りの方は―――』

アナウンスが流れ、降車する人たちが混雑した人の群れをかき分けるようにぎゅうぎゅうに押し合いながら移動をし始める。ハッと我に返り、真っ白に飛んでいた頭がようやく現実へ引き戻される。
気付けばまるで何もなかったかのように事は終わっていて。背後にいるはずの男も人混みに紛れるかのように姿を消していた。俺のベルトはだらしなく開いたままだった。

『ドアが開きます。ご注意ください』

ぐしょぐしょに濡らして萎んだペニスを慌ててしまい、俺は急いで電車を降りた。何食わぬ顔で今日も仕事へと向かう。
いつものように。―――後ろからついてくる男の気配にも気付かずに。

  

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