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「いやいやいや、待て!」
「……無理、待てない。朔ちゃんから誘ったんだよ」

部屋に入った途端、渚に押し倒された。
俺の上に覆い重なって唇に舌を挿し込まれ、強引にキスをする。

「待てって! こら…ッんっ、んうッ、渚……っ」
「はぁ…っ、朔ちゃん……朔ちゃん大好きだよ……んっ」

容赦なく注がれる口付けの息苦しさ以上に、こいつの馬鹿力に圧倒されてビビッている。両手首を床に押さえつけられ身動き一つ取れなかった。
今まで意識したこともなかったけど、こいつも男なんだよな。それにしたってこれは…俺の知ってる渚とはかけ離れすぎてる。

「なぎ…さ…っ、腕、痛え…って」
「あ…ごめんっ」

ようやく両手が解放され、渚の胸をぐっと押しのける。
さっさと立ち上がろうとする俺の手を今度は優しく掴んで引き留めた。

「怒った? 朔ちゃん」
「怒るっつーか…びっくりした。お前、やることが急すぎなんだよ…」
「じゃあ、怒ってない? 本当に?」

しょんぼり項垂れた耳が目に浮かぶ。こいつの悲しむ顔を見たくなくて恋人になるという選択肢を選んだはずなのに、どうしてこうなった。

「怒るに怒れねーだろ…そんな顔しやがって」
「ごめんね? でも俺、ずっと朔ちゃんとこうしたかったよ。会えない時も朔ちゃんのことばっかり考えてたし、昔から朔ちゃんしか見えてないから」
「……知ってる、バーカ」

こいつが俺に夢中なことくらい嫌というほどわかってる。俺をそういう目で見ていることも、俺にそういう関係を求めていることも。わかっていて部屋に上げるとか、俺のほうが馬鹿だった。期待させるだけさせてお預けなんて、そりゃ噛みつかれても文句は言えない。

「とりあえず渚、いったん落ち着け」

掴まれていた手を掴み返し、渚を引っ張って立たせる。

「少しはこう…ムードとか考えろ。ちゃんとベッドがあんだろ…そこに」
「えっ、朔ちゃんそれって…」
「なんだよ…ヤらねーのかよ」

ほんっとわかりやすい奴。渚の顔を見て、そう呟く。
さっきまでしょぼくれてたくせになんだよ、そのにやけ顔は。

「じゃあ朔ちゃん、改めて……」

ベッドの上で渚と向かい合って座る。改まってこうするのは余計に恥ずかしく思えて、さっきの流れでヤッちまえば良かったと今さら小さな後悔が芽生えたが、すぐにそれをかき消すように渚がキスしてくる。

「ん、ッ、ふ…んっ…ン」
「ん……っ、朔ちゃん…」

唇を重ねながら渚が再び俺を押し倒そうとする。

「待…て、っ」
「ええっ、もう待てないってば」
「…じゃなくて、お前がそっち側なわけ? つまり、アレは…」
「うん」
「うんって、そんな澄ました顔でお前な…」

普段俺より女々しいくせに、こんな時だけ男の顔するとか卑怯だろ。それにときめいてる俺も俺だ。

「嫌がることは絶対にしないから…俺に委ねて? 朔ちゃん」

そんな甘い台詞を吐いて、いよいよ本当に押し倒される。渚が俺の上に重なり、舌先で耳を刺激する。

「はッ…、ん……」

耳の中に舌をねじ込み、器用に舌先を動かして舐め回した。

「んっ…あ…はぁ、は…ッ…」
「朔ちゃん、耳弱いね? 可愛い」

渚が嬉しそうに耳朶を甘噛みする。そのまま舌を這わせ、首筋を通ってゆっくりと下へ移動していく。
乳首までたどり着くと、シャツの上から軽く歯を立てて刺激を与えてくる。

「ひっ……ぁッ…」
「朔ちゃんの乳首可愛い。一瞬で硬くなったよ」
「…っ可愛い可愛いって、さっきからお前…うる、せ…って…、んぁッ…!」

布越しにぷつっと形が浮かび上がった乳首をチロチロと舌で転がし、もう片方の乳首を指先で捏ねくり回す。

「はっ…、なぎ、…っ、あ…、はぁ…っ」
「朔ちゃんは痛いのも好き?」
「い゛っ……、!?」

返事を待たず唐突に乳首をギュッと抓られ、痛みに顔をしかめた。

「ごめんね、痛かった?」
「痛えよ…ッ、このバカ…」
「でも、気持ちよくない? 朔ちゃん絶対好きだと思うんだ」

言いながら指で押し潰し爪でカリカリと突起を引っ掻く。シャツの摩擦が絶妙に痛みを和らげ、力が抜けるようなくすぐったさと腰の痺れる刺激が同時に押し寄せた。

「っ、う…あ…、はぁっ、ひ……ぁ…っや、め…なぎ、さ……っ」
「そんな顔で言われてもやめられないよ…朔ちゃんの感じてる顔、もっと見たい」

恥じらいもなく甘い顔して渚は吐息を熱くさせている。こいつの興奮した顔なんて初めて見た。そうさせてるのが俺だと思うと悪い気がしない。

「朔ちゃんすごい硬くなってる。苦しそうだね」

渚がジーンズのチャックを下ろし、腹に手を滑らせる。パンツの上から窮屈に閉じ込められたペニスを包み込むように握り、形に沿って上下に擦った。

「お、い…っ、うぁ…っは……アッ…」
「こんな風に人に触られたことある?」
「あるわ、け…ねえ、…だろ…っ、は…ぁっ、あっ…」

片手で乳首を弄りながら、もう片手でペニスが扱かれる。亀頭から根元まで渚の手がゆっくり動くとパンツの中でひくひくと震えている。

「はっ、なぎ、……あッ、う…ぁ…っは…」
「直接触ってほしい? 朔ちゃん」
「ん…っ、ぁ…、さわ、って…、なぎ…さぁ…っ、んぁあ…ッ」
「うん、いいよ。触ってあげる。でも朔ちゃん苦しそうだから…一回楽になろ?」
「ひっ…あぁ…! う、あ…ッは……!」

渚が再び乳首をきつく摘まんでぐりぐりと指を擦り合わせ、ペニスを小刻みに擦り上げた。ペニスが大きく脈打ち、激しい絶頂感が襲ってくる。

「あっ、ぁ…なぎ、っ…はうッ、う…で、る…ッんあ゛っ、出る…から、ぁ…っ―――!」

手を止めない渚の愛撫に下半身が震え、腹の奥から駆け上がってくる熱を抑え切れずに一気に吐き出した。
射精し終えたペニスが痙攣し、パンツに白い染みが浮かび上がる。冷めやらぬ熱を前にして渚がうっとりとした表情で囁いた。

「はぁ…すごい…いっぱい出たね、朔ちゃん。でも、もっともっと気持ちよくなろうね? 次はお尻で逝かせてあげるから」
「はぁっ…はぁ…、なぎ…さ…っ」
「大好きだよ、朔ちゃん。愛してる」

俺だって、お前のこと……――呟きかけた言葉は降り注ぐキスに塞がれた。


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