「いやー奥さんの飯はやっぱ最高っすねー! こんなの毎晩食える先輩が羨ましいですよ」
「はははっ、だろ? 若いんだからどんどん食えよ。あっ莉子、ビールもう一本」
「ちょっと、今日は飲み過ぎないでよ…」
金曜日。毎週のように部下を連れて帰ってきては酔い潰れる夫に小さく溜め息を洩らした。
「そんな顔するなよ。休みの前の日くらい飲んだっていいだろ?」
「まぁまぁ先輩、心配してもらえるなんて幸せじゃないですか。それだけ愛されてるってことっすよ。……ねぇ奥さん?」
にっこりと微笑む彼の口角が僅かに傾くのを私は見逃さなかった。部下の中でも夫が一段と可愛がっているのがこの冴島という男だが、私はどうしてもこの人が苦手だ。
その穏やかな微笑みの陰で、いつもいやらしい視線を這わせてくることに気付いてしまったから――。
「そういや冴島、お前今日泊まっていくだろ?」
「えっ…!?」
思わず私のほうが声を上げてしまった。夫がこちらを振り向いて、平然と同意を求める。
「こいつ、彼女に追い出されて今夜行くとこないって言うからさ。一晩くらい泊めてやってもいいよな?」
「で、でも布団……」
「あー…先輩。迷惑だし、やっぱ俺これ飲んだら帰りますから」
「いーっていーって。泊まってけよ! 布団はねーけど、そこのソファ使ってくれていいからさ」
すっかり酔っ払った夫は豪快に彼の肩を叩き、じゃあ…と彼もそれを受け入れる。もう一度私に向かっていいよな?と念を押す夫に、渋々首を縦に振るしかなかった。
「なんかすいません、奥さん。急に押しかけておいて」
「いえ…お気になさらず。着替え、主人のものですけど置いておきますね」
精一杯の態度で応じると彼はまたにっこり微笑んで軽く頭を下げた。
一晩くらい……。夫だっているのだから、大丈夫。
彼への不信感を打ち消し、晩酌を楽しむ二人を残して私は先に寝室へ戻り眠りについた。
「…っ、ん……」
身体に感じる違和感に眠りから覚める。薄暗い部屋の中、枕元の時計に目をやると、まだ深夜の一時だった。再び眠りにつこうとしたところで、違和感は確かな感触へと変わった。
「……え」
ボタンが外れ露わになった胸に、剥き出しの下半身を貫いている塊。真上で自分を覆っている黒い影を、次第に暗闇に順応した視界にはっきりと捉える。
夫と飲んでいるはずの冴島の姿だった。
「いやっ…、ッ―――!」
叫ぼうとした口を手で塞がれ、こもった声だけが洩れる。
「やっと起きました? 寝顔、可愛かったですよ」
「んんうッ……! ふっ…うぐっ……んんんッ!!」
喉元でくぐもる声を振り絞るが響くことはなく、彼は余裕の笑みを浮かべた。
「いいんですか? 奥さん。生チ〇ポハメられてるとこ旦那に見られちゃっても」
ずっぽり根元まで埋め込まれたペニスに愕然とする。血の気が失せていく私をよそに彼は無遠慮に腰を動かし始めた。
「想像以上にエロい身体で興奮しちゃいましたよ。先輩がうらやましいなぁ」
「……ん、ふっ、…んんッ……んううッ!」
夫以外のものに膣内を抉られる屈辱感と罪悪感に苛まれ、涙がこみ上げてくる。中を掻き回されていく感覚がたまらなく気持ち悪い。
「手、離してあげますけど。騒いだりしないでくださいね? 先輩、奥さんの真面目で一途なところが好きだって自慢してましたよ。こんなとこ見られて幻滅されたくないでしょ?」
卑劣な笑みを浮かべてそう囁き、口を塞いでいた手がゆっくりと離れていく。こんな姿、夫に見せられない。妻が犯されているばかりか、その相手が自分の可愛がっている部下だなんてどれほど失望することか想像しただけで苦しくなる。大声で助けを呼びたい気持ちを抑え、冴島の言いなりになるしかなかった。
「お、お願い…もうやめて…、抜いて……っ、お願い……、ッんう、ぁ…!」
懇願を無視して彼はペニスを奥深くに突き立てる。
「こんなま〇こ汁でぐちゃぐちゃにしておいて、やめてって言われても説得力ないですよ」
「っ、ぅ…あ…ッ、は……うぐっ……あ…ッ」
「本当はちょっと感じてるんじゃないの? 奥さん。先輩のチ〇ポとどっちが気持ちいい?」
しつこく奥を責められ、わざと聞かせるように卑猥な音を立てる。私は懸命に声を殺し、吐息だけが零れる。
「気持ちいいって言ってくださいよ。じゃないともっと激しくしちゃいますよ?」
男のペニスが膣の中で熱くうねる。これ以上の辱めを逃れるため、私は震える声を振り絞った。
「…っ、き……気持ち…いい…っ」
「先輩のチ〇ポより気持ちいいんでしょ?」
「は…っ、あ…気持ち、いい……から……っ、は…ぁう…ッ!」
「本当? 嬉しいなぁ、じゃあもっと気持ち良くしてあげますね?」
「ひ…ッ…!? いッ…ぁ……い゛あっ!」
彼は嘲笑い、先ほどより腰を強く打ちつける。こんな屈辱を受けているのに身体がジンジンと熱く疼いてしまう自分がひどく情けなくて悔しさだけがこみ上げる。
「あんまり喘ぐと先輩に気付かれちゃいますよ。まあ、完全に酔い潰れて寝てましたけど」
「んっ、ん゛っ…あ…っ、は…ぁっ、や、め…っ、はぁ…っん゛うぅうッ」
認めたくないのに、膣壁を擦り上げられるたびに頭の中まで犯されているかのように蕩けていく。頑なに理性にしがみつき、快楽に蝕まれそうになる身体を守る。それでも容赦なく押し寄せる快感に心が負けそうになる。
「あー、俺も気持ちいいですよ……奥さんのま〇こに出したくなってきちゃったなぁ」
「……ッ! いや…っ、…お願い…中に出さないで……っ、お願い…、お…っ、お願いします…!」
「えー、奥さんだってそろそろ子作りしたいんじゃないんですか? ねえ? 孕んでくださいよ―――俺の子」
冷ややかに笑い非情な言葉を言い終えるや否や、彼はピストンの動きを速めてはち切れんばかりのペニスを子宮へと突き立てた。
「ああああぁぁッ……! いやっ、い゛あ゛…、あぁっ、はっ…あ゛ッ……やらぁぁぁっ」
「俺の精子、たっぷり受け止めてくださいね?」
「い゛やぁっ、あ゛ぁぁっ、中に出さないでぇぇッ……! いやぁぁぁっ……、あ゛ぁッ―――!」
必死の訴えも虚しく彼の身体が一瞬ぶるっと震えた直後、私の中に突き挿さったペニスがドクンと大きく脈打った。熱く滾る白濁が胎内に勢い良く注がれる。子宮が小刻みに震え、感情とは裏腹に子種を受け入れようとしている。
「っ…、いや……いやぁ……っ」
「そんなに拒絶されると傷つくなぁ。でも、奥さんのま〇こは喜んでるみたいですよ?」
ペニスがゆっくり引き抜かれ、生温かい精液がどろっと垂れていく感覚が肌を伝った。膣口がひくひくと痙攣しまるで絞り出すかのように溢れ出てくる。
「ほら、これがさっきまで奥さんのま〇こに入ってたモノですよ。ちゃんと綺麗にしてくださいね」
全身の力が抜け起き上がることもできない私の目の前に、白い汁の絡みついたペニスが差し出される。もう抵抗する気力も残っていない。浅い吐息を繰り返しながら唇を薄っすら開けると、そこを抉じ開けるようにペニスをねじ込まれる。
「ん゛…っ! ぶ…っううッ…ぅぐっうう…っ、ふっ…ふぐ…ッ、う゛えっ…んえ゛ッ…」
知りたくもない冴島の苦味が口いっぱいに広がって唾液が込み上げ、嗚咽が洩れる。それでも彼はお構いなしに舌へ擦り付けるようにペニスを押し当てた。萎みかけていたものが口内で再び硬直していくのを感じる。
「あー、奥さんのお掃除フェラ最高……また硬くなってきちゃいましたよ。先輩全然起きないし、いいですよね? もう一回くらいヤッちゃっても」
そう囁く声に私はもう抵抗することもできず、ただひたすらこの男に犯されながら夜が明けるのを待つことしかできなかった。
終