王子の決まり文句


「ハイ、終わり」

最後の一人の喉をかっさばいてナイフを腰にしまう。今日は比較的早く終わったなぁ、とぐちゃぐちゃになったか敵のパーティー会場のど真ん中に立って呟く。血を吸って重くなったコートを脱ぎ捨てたとき、背後の大きな扉が開いてベルが入ってきた。今日の任務はベルと一緒。彼とは日頃からよくつるむが任務は久々なので若干テンションがあがっている。

「黒猫ー、終わった?」

「見ての通りきれいさっぱり片付けた。
さ、早く帰ってボスに報告書書いちゃおう」

コートは新しく買ってもらわないとな、と頭の片隅に「スクアーロにコートおねだり」と書き留め、ベルを振り返る。と、その手にはなぜか真紅のドレスが握られていた。なて、誰かに贈り物だろうか?

「しししっ、そのまえにコレ。着てよ」

「は?なに言ってんの」

「いーからっ」

バフッ、と顔面に投げつけられたドレス。広げて見ると左胸に真っ黒な薔薇が存在を主張していた。早く早くと急かすように自慢のオリジナルナイフを顔の横でちらつかせるベル。早く着ないと刺すってか。わかった、わかった。

「分かったから、後ろ向いて」

ちぇ、と悪態をついて後ろを向くベル。その間にぱぱっとドレスを身に纏う。…この際サイズがぴったりなのは無視しよう。うん。

「ベルー、着たよー」

「んー。
ししっ、似合ってんじゃん」

口角をあげて言うベルに少しだけ赤くなる。ベルはそんな僕の手を突然引いて歩き出す。その行動に少しだけ呆けていれば「ドレス、王子からのプレゼントだから」と前を向いたままぽそりとベルが言う。プレ、ゼント?いったい何故に?
てか、どこに連れて行く気なの?ベルは。ベルの突然行動するはた迷惑な行動力にはもう慣れているので手を引かれていることにはもう驚きもしないが今日のベルは任務に来る前からそわそわしている。

そうして悶々としていると二つ隣の部屋にたどり着く。

「はいどーぞ、オヒメサマ」

と言う割には背中をどーん、と押されてつんのめるようにその部屋に押し込まれる。危うく顔面からダイブするところを寸での処で踏み留め、部屋の中に目を向けた。
部屋の真ん中には真紅のテーブルクロスのかけられた真っ白で小さな丸テーブルが一つと、ワイン、グラスが二つずつ。テーブルの上には小さなホールケーキがおかれている。一番に目を引くのは床に転がった死体たちだが、まぁ良しとしよう。

「・・・えーと?」

「忘れた?今日黒猫の誕生日なんだけど」


あ。


ベルに言われて壁に掛けられたデジタル時計に目をやる。日付は10月21日。確かに自分の誕生日だった。「帰ったらどうせオカマが用意してるだろーけど。ししっ」そう言ってテーブルのワインを両方のグラスに注ぐ。

「王子が一番先。



だって俺、王子だもん」

俺王子だもんの理屈は未だに理解に苦しむが、死体転がる中で祝ってもらえるのは、もしかしたら僕だけの特権のようなものかもしれない。



(流石に"もん"はやめれば?)
(別に良くね?)
(だって俺王子だもん)


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1000hit very thanks!!

お題処:Smile!:-)

20121012 黒猫


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