王子様のお迎え



それは、長い夢から覚めた後のあの朧げな感じに似ているのかもしれない。

ついさっきまで耳にしてた祭りの喧騒はすでに聞こえず、通って来た道を振り返ればほんのりと淡い光が見えるだけである。綱吉の慌てた声や隼人のぶっきらぼうな声、武の柔らかい声、リボーンやランボの子供にしかない高い声、ハルや京子の楽しそうな声はもう聞こえなくなってしまった。
イタリアに居た僕のもとへお祭りのお誘いのお手紙が来たのは一週間ほど前の事。リング戦以降比較的仲の良くなった僕の元にはそう言ったお誘いのお手紙が良く来ていた。けれど、結局任務だなんだと予定が合わず、お誘いに行くことが出来たのは片手で数えるくらい。それでも今回は予定を合わせることが出来た。ボスに日本へ行きたいといった時は冷や冷やしたが、案外あっさりと許可をもらえたのでルッスーリアにヘアセットと化粧を頼み、久々の着付けも手伝ってもらって何とか様になった。

「・・・?」

1人、くらい帰り道をカラコロと下駄を鳴らしながら歩いていると、前方から人が歩いてくるのが見えた。もう祭りも終わるというのに今から向うのだろうか?
そんなことを思いながら歩みを進めていけば、次第にその姿がはっきりとしてきた。美しい滑らかな金髪に乗せられた輝く銀のティアラのその人は、もうずいぶんと見なれた顔の人だった。

「ベル!」

「しししっ、黒猫みーっけ」

薄墨色の浴衣を着たベルはにこにこと笑いながら近づいてくると、僕の腕をからめ捕り、僕と同じ方向へ歩き出す。

「どうしたの?日本で任務?」

「ししっ、ちげーよ。お前を迎えに来たの」

「え?」

「なんて。ほんとはお前の浴衣姿が見たかっただけ」

だってお前、王子が任務でいない間に日本来ただろ?と言われて気づく。そういえば確かに、皆に浴衣を見せたあの時、ベルは任務でいなかった。でも、べつにわざわざ日本まで会いに来なくてもどうせ浴衣でイタリアまで帰るのに。と苦笑していると、何笑ってんだよと小突かれる。と、そのせいで躓く。なれない下駄をはいているからか、盛大にバランスを崩した。

「おっと、」

ベルのそんな声が聞こえたかと思えば、僕はベルに抱きあげられていた。所謂お姫様抱っこと言うやつだ。

「しししっ、相変わらず鈍くせぇの」

「なっ・・・!今のはベルの所為で・・・!?」

唇に柔らかいモノが触れたと思ったら、視界いっぱいに広がるベルの髪。キスをされtのだとすぐに気付く。すぐにぱっと顔を離したベルに抗議する。

「何すんのさ!?」

「ししっ、五月蝿いから口封じ。






あと、その浴衣似合ってんぜ」

悪びれもなく言われた台詞と褒め言葉のそれ。顔の赤くなる僕にベルはしししっ、と例の如くニヒルな笑みを浮かべた。





(王子が姫迎えに行くのって)
(あたりまえじゃね?しししっ)




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名前変換が一か所にしかない件。





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