甘い微睡


「ただいまー、ボスー」

派手な装飾の施された重い扉を開けて、書類整理に追われるボスを横目にボスのベッドへダイブするのはボスに拾われてから恒例の出来事で、ボスも何も言わない。横向きになってボスを眺めれば、もうシャワーを浴びたのか、首元にタオルを巻いていて、いつものツンとした見慣れた髪は重力に逆らわずに垂れていた。
はぁ、と息を吐いて隊服のコートを横になったまま脱ぎ捨てる。もう疲れたし、このまま寝ようかなぁなんて思ったらそんなボクの考えが分かったのか、ボスがシャワー、と一言だけ言う。

「あぅ、今いい感じに眠気が来てたのに・・・」

「死臭漂わせて俺のベッドに入るな」

「はーい・・・」






バスローブを羽織ってボスの元へ向かえば、ボスはベッドの上でお気に入りのワインを飲んでいた。今飛び込んだら怒られちゃうかもと思ったけど、眠さMAXのボクはそんなことうだうだと考えられないので、迷わずボスの逞しい胸に飛び込めば、怒られることはなく、空いた片腕で抱きしめてくれた。

「ボス、一口頂戴」

両腕でボスに抱き着いたまま、ボスの片手にあるワインをねだれば、口移しされたそれ。強いアルコールが喉を焼く。けれどそんな感覚になれたボクにはただ眠気があるばかり。目蓋は今にも閉じそうだ。
そんなボクを察してくれたのか、ボスはグラスに残ったワインを飲み干して、グラスをテーブルに置いたかと思えばボクの腕を引き、ベッドに潜り込む。思い切り息を吸い込めば、ボスの香りが肺を見たし、それがまた僕を安心させる。
目蓋を閉じる前にもう一度だけ、ボスにギュッとしがみつけば、力強く抱き返してくれて、おでこにキスを返される。

「とっとと寝ろ。隈がひでぇ」

「えぇ?そんなに?

まぁ、いいや。おやすみ、ボス」

今度こそ、目蓋は睡魔に浚われた。


(なぁー、黒猫は?)
(どーせクソボスんとこだろ)
(しししっ、相変わらずバカップルじゃん)
(ベルちゃん、ボスにそれ言ったら)
(間違いなくカッ消されるわよ)



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名前変換が一か所しかない件。



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