黒猫のいる世界 | ナノ


▼ 1匹目

立ち込る血の匂いと硝煙。見渡す限りが赤く染まる世界で闇色の髪をした女が目の前で尻をついて後ずさる男と対峙した。男は弾の込められていない、否。弾切れを起こした銃の引き金をカチカチと鳴らしている。
女はそれを嘲笑うような笑みを浮かべてどんどん男を追い詰める。
やがて男の背は無機質な壁に当たる。すると男は今までも青かった顔をさらに青くして女の足に縋り付いた。

「た、頼む・・・っ!命だけはっ・・・!!」

それを聞いて女は、猟奇的な笑みを浮かべて男の脳天にいくつもの針を差し込んだ。ズルズルと力をなくした男がその場に倒れこむ。その姿はさながらゴミの様。

「マフィアが命乞い?だぁっさーい」

女は男の脳天に突き刺さった針を勢い良く抜く。抜いたそれを左手に持ち、右の人差し指を血溜まりに漬け、床に何かを描いてゆく。

「う゛ぉおぉい!シャローナっ!!終わったかぁ!?」
「うるさいよスクアーロ。

見て、黒猫」

突如背後から姿を現した銀髪の男、スクアーロに今しがた床に描いたものを見せる闇色の髪の女、シャローナ。その口元からは先程までの笑みは消え失せており、表情は常の通り無に戻っていた。

「んなもんどーでもいい!終わったんならとっとと帰んぞぉ」
「はいはい。カズザメは相変わらず短気だねぇ」
「誰がカスザメだぁ!?」
「あんただよ。カスザメ」

不毛な会話をしながら消えた二人。






後にはただ濃い闇が残るだけだった。






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