「雲雀さん、お願いがあるのですが……」
普段あまり頼み事なんてしない葉月。
何時も僕の指示を真面目に熟し、文句など殆ど聞いたことさえない。
君以外の願いなら、今この瞬間に咬み殺すけれど、他ならぬ君の願い。
たまには一つくらい我が儘を聞いても良いかな、と思う反面、ここで貸しにするのも悪くないと打算的に頭脳は回る。
「何?」
脳内とは裏腹に対して面白みもなく、普段通り貫く口調。
だけれど、僕の何に驚いたのか葉月は零れ落ちそうなほど、その瞳を見開いた。
「えっ、良いんですか?」
「内容くらいは聞いてあげるよ」
そう答えれば、葉月はまるで花が咲いたようにパッと頬を赤く染める。
それだけでも十分なのに、口元は緩んで口角があがりっぱなしで。
全身で表現する葉月。
誰よりも分かりやすく、だけど自分では気付いていないのだろう。
そんな馬鹿な所も、中々見ていて飽きない。
ねぇ。
早くその“お願い”とやらを言いなよ。
悪くない答えがまっていると思うからさ。