「君なんて、いらない」
「……私のこと嫌いになったの?」
「あぁ。もう見たくもない」
秋の紅葉が落ちるように、彼女の目からもポロリと涙が零れる。
相手は眉間に皺を寄せ、苦しそうにしているが、彼女を抱き寄せたりはしない。
二人俯き、痛い時間が過ぎていくが、やがて青年は意を決したように、その場を後にした。
左手の薬指に嵌めていたシルバーリングを、その場に残して。
その場に崩れ落ちた彼女を映し、悲しいバラードのテーマソングがバックミュージックに流れると、やがて映像はエンドロールに移行していった。
暗い映画館の中、何人かの客は足早にホールを後にしていく。
が、葉月は中々立ち上がらなかった。
雲雀がどうしたのかと覗き込むと、
「……何泣いてるの?」
ハンカチを顔に当て、必死に声を出さないように泣く彼女がそこにいた。
どうやらこのベタなバットエンドのラブストーリーに感動したらしい。
結局エンドロールが全て終わるまで、彼等はその場に座っていた。
「よくあんなので泣けるね」
「……すみません」