「結城さん、実は」
珍しく草壁が苦渋を含んだ表情をすると。
葉月は笑顔でこう答えた。
「嫌」
外を見れば、ガラス窓の向こう側で飛行機が飛んでいく。
ダイヤルに正確な日本の航空便はまるで流れ作業のように、平然と動いていた。
──あと三十分後には搭乗し、この土地を去るのか。
空港でこうして時間を潰していると、今まで気にも止めなかった事ばかりが気になってしまう。
草壁は今朝まで生活していた、並盛の事を思い出していた。
彼の尊敬する雲雀恭弥が、ツナ達と共に行動するようになってから(本人は共にしていないつもりらしいが)、何時かこういう日が来ると理解し納得していた。
雲雀自身がボンゴレの守護者であるつもりが無くとも、周りは彼を必要としていたし、また、雲雀も口には出さなかったが何処かで理解していたに違いない。
でなければ、いくら戦闘狂の彼でも誰かと同じ獲物を狙うなどしないだろう。
ツナを咬み殺さないのが良い証拠だ。