「忙しいのにありがとう」
例えば私が男だったら。
例えば私が風紀委員だったら。
例えば私が草壁君を友達以上に想えていたなら。
そうならば、もう少し何かを手伝えたかもしれないのに。
私は結局どれにも当て嵌まらないのだ。
私は女で。
私はただの学級委員長で。
私と草壁君は友達で。
なんて無力で、なんて情けないのだろう。
「気をつけてくれ。結城さんに何かあったら委員長に合わせる顔がない」
「え、私?」
草壁君はちょっと苦笑して、そのまま応接室を後にした。
私も、雲雀さんのいない此処は広すぎて。
気分転換に屋上へ向かう事にした。
キィッと少し錆び付いたドアの音。
普段あまり行く事がない屋上。
少し、不良になったみたいだ。
今日は快晴で気温は暖かく、きっと風が涼しいくらいに吹いているだろう。
期待をして、そのドアを開ければ、予想通りの青空の下──
ドクリと心臓が鳴った。
そこには先程まで焦がれてやまなかった人が──
「ひ、雲雀さんっ!?」
フェンスに腕を乗せて、並盛を見下ろしていたのだから。