その男、最強、最悪そして─―最低。





白いレースのカーテンが心地良い風に吹かれて靡く。
カーテンから透けて見える外には、相変わらず英国らしいどんよりとした空が広がっていた。
だが、その空も大都市(ロンドン)よりは遥かに澄んでいるに違いない。


カーテンと同じ仕草で葉月のドレスの裾がたなびき、セバスチャンの燕尾服の裾も同様に揺れた。


桜色の唇に、自らの入れた紅茶が流し込まれていく。
甘いロイヤルミルクティーの匂いが部屋中に立ち込め、その匂いと女性の香水の匂いが混ざり合い、何故か例えようもなく欲を煽られた。


無防備に口に含まれるそれに、毒物を仕込んでみたいという危険な欲望が頭を掠める。


すると、その考えを読み取ったかの様に、桜色の唇が上向きに弧を描いた。


「お口に合いませんでしたか?」


案に“口に合って当然だ”という意図を含ませる。
だが、純粋、素直、その上純潔な葉月には伝わる筈もなく、セバスチャンを真っ直ぐに見詰めた。
その、黒真珠の様に輝く、底の知れない綺麗な瞳で。


手に持っていたティーカップを音一つ鳴らさずにソーサーへと戻す。


象牙のような肌に、滑るような流れる黒髪。
東洋人の彼女からは想像も付かない優雅な仕種は、英国人に負けず劣らずといった所だ。


彼女は、先日から家庭教師としてファントムハイヴ家に居候している葉月。
教えている内容は、その動作から想像も着く通り“マナー”である。


「……合いすぎて怖いの」


ぷくっと、無意識に膨らんだのであろう赤い頬。
それは、アダムとイヴの過ちの林檎ようにも見えた。


「どうしたら、こんなに美味しく入れれるのかしら?」















日本人家庭教師シリーズより。
ヤラレヒロインである彼女ですが、本質は先生。
ということで、雇われ先生と執事の腹の探りぁ……大人の恋愛をイメージして検討しています。
が、はて?
大人の恋愛って何でしょうね?




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