「それでは、本日はハーブティーにいたしましょう」


そう何時もの笑顔で告げると、黒づくめの執事はキッチンに姿を消した。





何故ハーブティーなのか。
突然そう言われても葉月にはさっぱり理解出来なかった。


不思議そうに目をぱちくりさせる彼女を、この屋敷の主であるシエル・ファントムハイヴは哀れみに満ちた瞳で見詰める。
葉月にばれないよう、静かに溜息をつくと、自身の、あくまで執事である男の去った後を懸命に見詰め、難しい顔をして必死に考える、これまた自身の家庭教師が、本当に哀れで仕方がなくなった。


“そんな寂しそうな顔をするな。奴の思う壷だぞ”と、ついついお節介を焼きたくなる衝動を必死に抑える。


シエル自身、他人の恋路に口を出して、話をややこしくすることを望んでいるつもりはない。
勿論、とばっちりを受けるつもりも……ない。


ならば好きな様にさせておくことが、彼に残された選択肢だろう。
今、まさに自身に縋ろうとこちらを振り向いた家庭教師を無視してでも。















日本人家庭教師シリーズより。
短編作品「タイム」のanother storyとして作成中です。
「タイム」は他にも、アイスティーにしてみようか、という案もあったのです。
花言葉、楽しいですね!




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