長い廊下の先。
通された和室は着付けした部屋より広く、真ん中に4名掛けの座椅子が用意されていた。
そこに、ちょこんと座っている男の人が1人。
「こんにちは」
私達を見ると、その人は慣れたように席を勧めた。
彼の正面にパパが。
その隣に私が腰を下ろす。
「はじめまして、葉月さん」
にこりと人懐こく柔らかく笑う人だ。
わりと小柄で、とても優しそうな。
イタリアを拠点とするマフィアとは思えない。
「沢田綱吉さんだ」
「はじめまして。葉月です」
私も習って頭を下げる。
てっきりイタリア人が来るかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
とりあえず、言語の壁に問題はなさそうで安心した。
「今日は本当にありがとうございます。来てくれなかったらどうしようと思っていました」
「そこまで思っていただけて光栄です」
沢田さんの笑顔に、パパは苦笑する。
そりゃそうだ。
始めから、断るお見合いなのだから。
「葉月さんもありがとう。実は“彼”が貴女以外とは会わないと言っていて。藁にも縋る思いだったんです」
──どんな人だ。
と思う。
期待されるのは悪くないが、腑に落ちない。
私はいつ“彼”と会ったのだろう?
「こちらから頼んでおいて、すみません。“彼”も直ぐ来ると思いますから」
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実はコレ、ボス見習いシリーズの短編予定ですが、長編にしても面白いかなー、と。
悩み中。
他にも候補プロットがあります。
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