「噂の婚約、明日だって聞いたんだけど」
「そうだよ」
──だったら、何故?
葉月は今の現状が不思議でならない。
婚約などしたことはないが、普通婚約前夜といえば身なりを整えたり、明日の段取りの確認をしたり、人によってはマリッジ・ブルーならぬ婚約・ブルーになったりするものだろう。
たとえそれが、少し特殊なタイプの人間でも、特殊な職種に就いている人間でも。
チャキッと金属が回る音がすると、葉月もほぼ無意識に手の中にある銃のセーフティーを外す。
現在雲雀と葉月は敵ファミリーの屋敷に、いた。
普段滅多な事でもない限り、1人で任務を熟す雲雀に珍しく依頼され、現在進行形の仕事は実に謎に包まれていた。
先ず、暗殺等のランクの高い仕事ではないこと。
勿論、場合によってはそれも有り得るが、仕事自体は重要な資料データのハッキングだ。
二点目はまさにそこ。
資料データのハッキングに何故雲雀恭弥という戦力が当てられたのか。
三点目は葉月に依頼が来たということ。
葉月はボンゴレの人間ではない。
ボンゴレの人員不足は有り得ないし、たとえ不足していたとしても情報として漏れやすいデータハッキングに派遣を雇うはずがない。
──正に謎だらけの依頼ね。
「仕事中に考え事なんて余裕だね」
「明日、婚約する人に言われたくない」
何発が相手の銃弾の音がして、それに交戦していく。
前衛で雲雀が容赦なくトンファーを振るえば、やはり依頼されるほどランクの高い仕事ではなかった。
何故なら、葉月は殆ど撃っていないのだから。
いや、撃つ必要がないのだ。
相手の大半を雲雀が咬み殺してしまっている。
彼は葉月が拳銃で援護等しなくとも屍に変えられる実力があるのだから。
雲雀の後を追って、広い屋敷の廊下を一気に駆ける。
こうしていても、足音の殆どない雲雀と、ヒールの音を上手く消せない葉月とでは誰に言われなくとも実力の差を感じてしまい。
──足手まといは私、か。
疑問は尽きる事がない。
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以前、memoでもアップしたサンプル作品です。
まだ書き上げてなかったのか……。
自分自身に衝撃です。
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