珍しく理一さんが真剣に携帯を見ている。
OZにでも飛んでいるのだろうか?
仕事をしている時はあんな感じなのかと思わせるような、眉間の皺と真っ直ぐな瞳。
長い睫毛はあまり瞬きしなかった。
今年は夏希ちゃんが彼氏を連れて来るらしい。
何やら噂ではとんでもない学歴をお持ちのようだが、良い人だと良い。
陣内家を気に入ってくれると良い。
何時もとは違う夏休みに少し気持ちが高鳴った。
「理一叔父さん。お茶持って来ましょうか?」
「うん、ありがとう。……あ、葉月ちゃん」
「はい?」
何時になく真剣な顔で見られて緊張する。
この端正な顔で異常にフェロモン流出中のおじ様が、私は実は少し苦手なのだ。
「葉月ちゃん、今年いくつだっけ?」
「十八歳ですよ。夏希ちゃんと一緒なので」
なんで?と首を傾けると、また携帯の画面をじっと見ている。
不思議に思い画面を見ると目を疑う光景があった。
すっごく可愛い女の子が、イケメンのおじさんと素っ裸でキスしているシーン。
「今の少女漫画って凄いね」
「あ、あのっ」
「これは二十歳の女の子が八歳から育てた叔父さんとセックスする話」
今、すっごく生々しい表現した。
躊躇いなく言ったよ、この人。
そして、にこっと背筋が粟立つような恐ろしい笑顔を向けて、
「……あと、二年か。我慢出来るかな?」
くすくす笑う理一叔父さんを背後に、全力でキッチンに逃げた。
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