「ねぇ。君、美味しそうだね」
ヒバリの、グレー掛かった瞳が獲物を捕らえるようにギラギラと光る。
「私を食べちゃうの?」
少し引き下がり、不安そうに見詰めるのはハヅキ。
最近、ヒバリの根城である屋敷に来た新人だ。
さっそくテリトリーの主であるヒバリに目を付けられたらしい。
彼がにじり寄ると、逃げられないと分かっているのか、ただその場で困惑するだけ。
そんなハヅキをヒバリはただただ、楽しそうに見詰めていた。
「あー、勝手に登ったらダメだろ、ヒバリ!」
「は?あなた、今何て言ったの?」
いきなりの指名に苛立ち、トンファーを構える雲雀。
対してディーノは“しまった”というように、困惑した。
そして、棚の上。
金魚鉢にくっつくように寝そべる黒猫を、ひょいと抱き上げると、
「こいつの名前。ヒバリって言うんだ」
「恭弥にそっくりだからな」と、最近キャバッローネに住み着いたノラの黒猫を人間の雲雀に紹介する。
──が、
「いでっ!」
ヒバリは「ふざけないで。あなたに飼われてるつもりはないよ」と言いたげにディーノの手を引っ掻くと、さらりとまた、棚の上の金魚鉢に擦り寄った。
金魚鉢の中には、真っ赤な金魚が一匹。
ヒバリの視線から逃げるように、左右に動いていた。
「ねぇ。あの金魚って並盛の縁日であなたが取ってたやつ?」
「あぁ!ハヅキっていうんだ。ヒバリがやたら気に入るから、何時か食われるんじゃねーかって心配なんだよ」
苦笑するディーノなどお構いなしに、猫のヒバリはしっぽまで金魚鉢に擦りつけている。
まるで「この子は僕のモノだよ」と言っているように。
「ボスは心配しすぎなんだ。あいつらは仲良しなだけだぜ」
肩を竦めるロマーリオに、絶対嘘だ、と猛講義するディーノを見下すように。
黒猫のヒバリがちらりと彼等を見ると、大きな欠伸をして、ぺたりとそこに寝そべった。
金魚のハヅキも、ヒバリに近付き彼を見詰めている。
部屋の外からは、一緒にイタリア旅行に来た人間の葉月が、丁度、三時のオヤツを持って扉をノックした。
お題拝借:森blog 様
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