どれくらい経ったのだろうか。
恐怖の体験に、もう生命を奪われても構わないと思った頃。
「ハヅキ、ハヅキ」
と、可愛らしい声が聞こえた。
「君の方が速かったみたいだね」
雲雀さんの優しい声が聞こえれば、また、彼の手でウエスト辺りを捕まれた。
抵抗なんて出来るはずもなく、されるがままにしていると。
胸ポケットから出されて雲雀さんの掌に乗せられた。
急に明るくなった辺りに少し目をしばしばさせる。
──一体何処だろう?
胸ポケットの中にいた間、何処かに移動したのに間違いないのだが。
そう、のんびりとした脳みそで考えていたことが間違いだった。
『え……何、此処』
光に慣れた私の目の前に広がるのは。
テレビか京都でしか見たことのないような和風の屋敷だった。
驚きのあまりピキッと固まった私に気付いたらしい。
頭上からクスッと息の漏れる笑い声が聞こえると。
「緊張してるの?可愛いね」
信じられないほど優しい声と、何時も危険な武器を持っているとは思えないほど綺麗な手で。
雲雀さんが私の頭を撫でてくれた。