「帰るよ」


そう言われて、始めて今日の寝床の心配をした。


雲雀さんは今日の分らしい資料を纏める。


──学校に泊まっちゃ駄目かな?


流石に鳥の姿で自宅に戻るわけにもいかない。
沢田君の家に泊めてもらうのも悪くないけれど、やっぱり迷惑だろうし、一応、女の子としての私に決心が付かない。
何処か他の場所に移動しても良いが、飛べない私が行ける距離なんて限られているわけで。


というか、先ず間違いなく執務机から降りられないのだが。


『先に行ってるね』


ヒバードはそう言うと、その綺麗な黄色の翼をバサリと広げて、優雅に応接室から飛んで行った。
──あんな風に飛べたら良いのに。


『じゃなくて、私は!?』


飛べるはずもないお飾りの翼を上下に動かして『ちょっと待って』と彼に叫んだけれど、ヒバードはとっくに聞こえない所まで行ってしまったらしい。
黄色のその身体はただでさえ小さいのに、既に胡麻粒くらいの大きさになっていた。


「君は飛べないでしょ」


そう声をかけられ、突如後ろから伸びてきた雲雀さんの手に捕まる。
人間でいう腰の辺り、を。


『ちょ!?』



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