保健室で借りたジャージは無事。
三度目の水掛けもなく、授業は終了。
部活の時間である。
あれから水掛けの変わりに、
階段で生徒とぶつかり落下する×三回
足を引っ掛けられてこける×五回
スニーカーを盗まれる×一回
等、生傷の絶えない虐めが頻繁に起こった。
数人は顔を確認したものの、誰一人記憶にない人間だったので、予想通り一般の生徒であろう。
仕方ないと言えば仕方のない結果であった。
因みにスニーカーを盗まれた私は、諦めて体育館シューズを履いている。
中々基準服には似合わないデザインだ。
「楓原じゃねぇか。おい、侑士見ろよ!ヘン、良いざまだぜ!」
「ホンマ、一日でえらい傷やなぁ?さっさと加奈に謝ったほうが良いんとちゃうん?」
ニヤニヤと屋上での会話がなかったことのように話しかけてくる。
「おかげさまで。でもゲームはまだ始まったばかりよ?」
そう挑発的に言えば、それに反応した向日岳斗が私の顔を片手で固定する。
「今、加奈に謝ればなかったことにしてやっても良いぜ?」
「それはこちらの台詞よ」
「ちっ」
ドカッとよい音が鳴る。