「ハヅキ、これを」
差し出された手紙を受け取ると、ハヅキの目は一瞬でキラキラした物へと変わった。
何度となくインゴが聞いてきた内容。
そう、それはイッシュのライモンシティから届いた手紙で“ユノーヴァでの研修終了”を意味するものだった。
ノボリからの直筆の手紙。
それをハヅキがいかに望んでいたかを知っていたからこそ、インゴは苛立っていた。
満面の笑みで文字を目で追うハヅキ。
彼女が笑顔になればなるほど、イライラが募っていく。
――ああ、ワタクシは、
ドクリと黒い感情が支配していく脳内。
それが何かを知らないほどインゴは子供ではない。
「インゴボス、今までありがとうございました!」
そんなことなど露知らず笑顔でお礼を言うハヅキ。
きちんと一礼することも忘れない。
執務室を出る間際“ノボリボス、元気かな?”そう聞こえた何気ないはずの声に、先に身体が反応した。