後からバーを出たエメットが楽しそうに笑って着いて来る。
その態度と言葉にあからさまに嫌な顔を、眉間に皺を寄せて睨みつければ。
彼は更に楽しそうにしていた。
「ナニナニ?インゴ、とうとうタたなくなった?」
「死ね、クソ愚弟が」
纏わり付くエメットを見もせずに罵倒する。
知らない人間が見ていればジュンサーさんに通報するレベルだ。
だがこのニンバサシティでサブウェイボスを知らない人間など皆無に等しい。
そして明らかに機嫌の悪い彼等に近付く強者も、いない。
「もー、じゃあ何がイケナイの?せっかく明日お休みなのに」
「ビッチのくせに、更に低能のクズ雌とは空間すら共にしたくありません」
「…………」
──あれ、ビッチだから低能でクズ雌じゃないの?
と、エメットは考えたが口にするのは止めた。
インゴの機嫌が普段より悪いため、どんな被害が待ち受けているか考えたくもないから。
街の大通りまで戻る。
これから繁華街へ繰り出すビジネスマンやOL、エリートトレーナー達の楽しそうな姿が見られて。
夜はこれからなのにな、とエメットの心は少しだけ落ちた。
「ネー、家で飲みなおさない?おつまみ買って帰ろうよ」