「おやすみなさい、坊ちゃん」


もう既に太陽が沈み、暗い闇が世界を包み込む時間。


セバスチャンはシエルの意識が夢の中へ落ちるのを確認すると、手に持った燭台の火を消し、暗い廊下の先、地下の部屋へと歩みを進めた。















ファントムハイヴは女王の憂いを亡き者にするためだけに存在する、女王の影(ファントム)である。
その特別な職業の性質から、通常の屋敷にはあまり存在しない、特殊な部屋が地下に存在する。
──所謂、拷問部屋と言われる部屋が。


家の使用人達も入ることの許されない、そこ。
シエルがファントムハイヴ家の当主になってからはほぼ利用されない部屋は、それでも何時でも使用出来るよう、セバスチャンがきちんと管理していた。


ただし、現在は使用されないのを良い事に、セバスチャンの私用に利用されているのだが。


コツリコツリと革靴のヒールが音を立てて、冷たい石の階段を降りる。
決して明るく照らされているとは言い難い壁の蝋燭の炎。
その炎で出来るセバスチャンの影が伸びると、その先で微かに何かが動いた。


それを見て、クスリと笑みを浮かべる。



←|TOP


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -