「嘘、だよな?嘘だと言ってくれ!」
コンラートに隠された掌の奥で。
有利は見えない相手に、そう訴えた。
コンラートの援助もあり、何とかその場で爆発しそうな有利を抑えて血盟城まで引きずり戻した。
あの場でややこしい事になるのも問題だったが。
有利に紅い池は似合わない。
誰もがそう思ったからだ。
グウェンダルとギュンターにはヨザックから事の次第が報告され。
直ぐに何人か現場に派遣された。
死者の弔いと、惨事の片付けのために。
そして、リーヴェは。
「約束、だったよな?」
またしても有利と睨み合いの状態を強いられていた。
──狡い。
と、リーヴェは思う。
捨てられた動物のような目で、縋るような言葉を吐く。
信じたいと訴え、けれど許せられないと零す。
そんな曖昧な有利の態度が、更にリーヴェの心を蝕んだ。
「もう、人を殺さないって、約束しただろ?」
震える声。
震える手。
その全てが、リーヴェを攻めた。
──何故、裏切った?
のだと。
裏切ったつもりはない。
仕事を熟しただけだ。
そう叫べるならば、どれだけ楽なのだろう。