「なら早く探しに行かないと!」


ガタリと椅子から立ち上がり、慌てて執務室を出ようとしたのは有利だけだった。















皆、落ち着いた面持ちで微動だにしない。
ヨザックでさえ、グウェンダルの後ろに立ったままだ。


「どうしてだ?助けないと」


「間違えるな」


──彼は優しい。
そう、以前ヴォルフラムに感心したことがある。
誰より真っ直ぐで、鋭利な刃はミットもグローブも貫いてくるけれど。
その言葉は隠される事のない、透明な直球だ。


「間違えるな。一番はユーリだ」


「は?」


「一番に安全を確保されるのはお前だと言っているんだ、ユーリ。……リーヴェじゃない」


心臓が止まったかと思った。


──それは、おれが、魔王だから?


有利にとってそれは不自然だった。
命は皆、平等で。
魔王も閣下も国民も、皆同じくだ。
誰かのために、誰かの命を削ることは可笑しい。


「貴方はSPに守られる立場なんですよ、ユーリ」


コンラートが優しく諭す声で伝えても、彼が立ち上がって肩を軽く叩いても。
納得出来る訳がない。



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