──昔、誰だっただろうか。


リーヴェは消えいく意識の中で、誰か分からない人の声を思い出した。


「忌むべきは魔族だ」


確かに誰かがそう、告げたのである。















「どうしても行ってしまうのですか?」


リーヴェは人間側に付くと言って聞かない、フォングランツ・アーダルベルトに必死に声をかけていた。


「あぁ。オレは人間共に付く」


「フォンウィンコット卿のことは──」


アーダルベルトはリーヴェを真っ直ぐ見詰めて、軽く左右に首を振ると、その先を言わないように諭した。


「ジュリアのことはお前のせいじゃない」


「しかしっ!」


何かを納得した男は自分の意見を曲げず、今、愛する者のために敵国に付こうとしているのである。


リーヴェには納得出来なかった。
ジュリアの死は自分のせいであり、そのせいでアーダルベルトは勿論、コンラートさえも闇の中に落としてしまったのである。
自らの失態で起こしてしまった問題に何故、彼がこんなにまでして、他国に行かなければならないのか。
追放されるべき、いや、処刑されるべきは自分ではないのかと、自問自答していた。



←|TOP


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -