扉の音がやけに重く響き渡る。














リーヴェは震える身体を必死に抑えて、執務室へ足を踏み入れた。


「グリ江ちゃん!」


途端、少年の明るく溌剌とした声が部屋に響き渡る。


身体がビクリと跳ね上がった。
聞いたことの無い少年の声に戸惑いを隠せず、瞳が勝手にキョロキョロと優柔不断に動き回り。


そんなリーヴェを余所に、ヨザックはドレスを翻し、声の主にアメリカンフットボールの如く抱き着いた。


「まぁ陛下。今日も可愛らしいわねん」


「わあぁっ!グリ江ちゃん、離れて!!」


ドカッという低い音に続いて、ピンク色のハートが飛び散る中、渋々ながらも命令に従い離れるヨザック。
声の主である有利は拒否を示すも、優しく嬉しそうな笑顔でヨザックを見詰めた。


そして。
それを囲む周り──嫉妬するギュンター、自分が婚約者だと主張するヴォルフラム、楽しそうに優しい笑顔で見守るコンラート。
グウェンダルはこの場にこそいないものの、この場にいれば眉間に皺を寄せながらも可愛らしい動物を見る、優しい瞳を向けているのだろう。


──あぁ、此処はこんなにも暖かい世界なのに。



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