地球と変わらない太陽が、遠い山の影に隠れて行き、月が昇る時刻になれば。
血盟城に軽やかな曲と、普段は落ちる松明の赤い光が宝石のように散りばめられる。
金のシャンデリア。
塵一つない赤い絨毯。
着飾った紳士と貴婦人達。
全てが美しく作られた空間の中──
「なぁ、本当に大丈夫なんだよな!?」
「だからユーリはへなちょこなんだ!」
「まぁまぁ。陛下もヴォルフラムも落ち着いて」
この舞踏会の仮の主催者である有利は、極度の緊張から兎よりも震えるという悲しい事態に陥っていた。
そうなるのも無理はない、とコンラートは苦笑する。
この幼くも正義感の強い魔王陛下は、今夜、確実にその命を狙われているという空間に自ら突入しなければいけないのだから。
有利の後ろからポンと肩に手を置くと、ビクリと跳ねる双黒の服を纏う肩。
コンラートを見上げる瞳は、若干涙ぐんでいて、眉毛は完全にハの字だ。
「大丈夫ですよ、陛下。俺もヴォルフラムもヨザックもいますから。それから……」
──“リーヴェもね”。