「よお、リーヴェ!生きてたみてぇだな!!」
痛いくらいの強さで、身体を思い切り叩かれる。
その反動で、自身の意識下に落ちていたリーヴェを起こしたのは──
「アーダルベルト様!?」
フォングランツ・アーダルベルト。
魔族を見限り、人間側に付いたアメフトマッチョ君だった。
アーダルベルトはリーヴェの驚いた様子を見てニヤリと笑うと、その朱色の髪がグシャグシャになるくらい強く頭を撫でる。
その表情から軽い安堵が浮かんでいたのを、リーヴェが知る由もないが。
「あ、あの!?一体どうされたのですか?」
これ以上、髪が乱れる前に何とかしようと慌てて声をかける。
突然現れたアーダルベルトの行動は、実に不可解だった。
人間側に付いた彼が、こうも魔族の土地に深入りしてくることは珍しい。
事実、旗を翻してからアーダルベルトが踏んだ魔族の土地は、国境付近の人間の村までだったから。
それが此処、血盟城が見下ろせるくらい近く、魔族の中心地でもある場所まで来るとは。
余程の用事か、何かの事情か。
それくらいしか考えられない。