──誰かが泣いている。
私はそれが“ゲイン・リーヴェ”だと分かった。
暗闇の中、独り佇んでいる少女。
そのゲイン・リーヴェを見て、直ぐ理解出来た。
ここが、私の意識の中だと。
きっとあの丘で倒れたのだろう。
緊急を要する事態のはずなのに、何故か感情は落ち着いていた。
まるで、意図的に仕組まれているように。
──あの“私”は何故泣いているのだろう?
不意に思考が動いた。
夢特有の事だ。
奇妙だったり不思議な事象も夢ならば関係なく進んでいくのだから。
「どうして泣いているの?」
少女の肩を軽く叩けば、こちらに振り返る幼い“私”。
涙と鼻水でとても見れた顔ではなかった。
「悲しいからよ」
「どうして“悲しい”の?」
そう聞けば、少女は驚いた顔をした。
器用にも涙を流したまま。
エメラルドグリーンの目をぱちぱちとさせて、珍獣でも見たような表情だ。
「貴女が私を虐めるからよ」
「私が?」
「そう」
“どうして?”という、その言葉は伝わらなかった。
少女の指差す先に流れていた記憶が、
「ジュリアを忘れたいの?ねぇ、ゲイン・リーヴェ?」
“あの時”を思い出させる──