突如叫び声が聞こえた。
「蛮ちゃん!!」
葉月は行きつけの喫茶店でよく顔を合わす友人の、切羽詰まった声に驚き、荷物を気にせず振り回して、声のした方へと走る。
混雑している明るい表通りから気味の悪い裏通りへ少し入れば、探していた人達は直ぐに見付かった。
「銀次君!?」
「えっ、葉月ちゃん!?何で此処に?」
銀次が弾かれたように振り返る。
「銀次君の声が聞こえて……蛮君も、その傷っ!!」
二人は遠くからでも分かるほどに傷を負っていた。
よく見ればそれはまるで鎌鼬(カマイタチ)にでもあったかのような鋭い切り傷。
「酷い傷……直ぐに手当しなくちゃ」
二人が危険な仕事をしていると、以前、喫茶店の店長である波児に聞いたことがあったが、ここまで酷いとは想像していなかった。
銀次はまだ見られるものの、蛮は見ているだけでこちらまで痛く感じるほどに傷を負っている。
応急処置だけでもと、二人に駆け寄る葉月を、蛮は睨み付けるように鋭く見、叫んだ。