桜が咲き頃を迎えた春、三月末。















朝早く、多分殆ど誰もいないであろう学校へ向かう途中の桜並木は、そよ風に吹かれ桃色の花を綺麗に散らせている。


今日は卒業式。
幸運にも今までに雨が降らなかったため、桜は満開。
これ以上ない、卒業式日和である。


この日、多くの在校生の大半は、たいして卒業式に関心がなく、つまらない行事に参加しなければいけないと気怠く考えている生徒か、部活動でお世話になった先輩を送るパーティーの準備で大忙しか。
勿論、私が所属する男子テニス部も例外ではなく、部長──いや、元部長達三年生を送るパーティーの準備に追われていた。


ふと前を見ると見慣れた黒髪のクラスメイトが歩いていた。


「手塚!」


大声で叫べば、中学生としては大人っぽくキリッとした端正な顔の眉間に皺を寄せてこちらに振り返る。
私は嬉しくて駆け足で彼の元へと駆け寄った。


「おはよう。今日も朝から早いね」


追い付いてポンと高い位置にある背中に触れる。
少し強めに触れてもびくともしない背中を後に、彼の横に立つと、手塚は私に合わせた少し遅目の歩調で歩き出してくれた。



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