誰かが呼んでいる。
「ハァ……ハァハァ」
息が切れる。
暗い闇の夜。
まるで演出として狙っているのかのように雨が降り、全身に痛いほど水が突き刺さった。
死喰人としてヴォルデモート卿の下に堕ちてから、心に安らぎなどない。
いや、元々“安らぎ”という言葉から遠い生活をしていたのだから今更と言えば今更だ。
「……ッ!!」
ズキッと身体が痛んだ。
魔法でやられた傷は自身が思っていたよりも深いらしく、もう殆ど体力さえ残っていない。
引きずる足を止め、ドサリと音を鳴らして地面に倒れ込む。
水を大量に含んだ漆黒のローブは重たく、もはや抵抗することすら億劫に感じた。
意識も朦朧とし始め、もう自身でも命の灯が消えるのではないかと諦め半分、自嘲気味になる。
重たい瞼を無抵抗のままゆっくりと伏せ。
今、頭の中を駆け巡るのは……愛するリリー・エヴァンズだけだ。