「あ、いたんですかィ。盗み聞きとはよくねェですぜ?」
「あからさまに俺の部屋の前で話してただろォォォ!?」
「え!?ここ土方さんの部屋なの!?総悟の部屋じゃなくて?」
ニヤニヤ笑い、完全に計算でやっているであろう総悟とは対称的な顔をしている結城は、どうやら本当に知らなかったらしい。
「俺ァ、こんなに煙草臭い部屋じゃねぇさァ」
「煙草臭くて悪かったな!!……ってオイ!?」
気付けば結城が全力で屯所を走り抜けていった。
「アンタが出てくるから葉月が逃げたじゃねぇか」
──俺のせいなのかよ!?
総悟は「つまんねぇ」と漏らすと昼寝をしに縁側へと足を運ぶ。
チッと舌打ちをするその背中に向かって、少し八つ当たり気味に叫んだ。
「総悟、仕事サボるんじゃねぇ!!」
あんな事件があった次の日だ。
いくらなんでも結城は来ないだろうと踏んだ俺が甘かった。
「やっぱり“好き”より“愛してる”の方がいいかな?」
「“愛してる”だと重く感じるかもしれやせんねィ」
相も変わらず、俺の部屋の前で例の妙な話をしている。