──私、笑いたいだけなの?


故郷である東洋の島国日本から、就職のために、こんなに遠いイギリスまで渡英して。
上司である、陰険根暗な魔法薬学教授の嫌味とお小言を毎日聞いて。
オーバーリアクションの生徒達に笑い者にされて。


その中で、私が一番欲しいものが、笑顔?
それはさすがに無いだろう。


がくりと肩が落ちる。
溝の鏡でさえ、私自身が知りたい、私の本当の願いを写さないのだ。


可哀相な私。
夢も希望も、願いさえも無くしてしまったに違いない。


なんだかとても惨めになり、もう一度だけ鏡を見て諦めよう、と、ふいに鏡に目を向けた。
そこにはやはり、笑顔で私に手を振る私と。


「え、教授?」


その後ろ、真っ黒な何時ものスネイプ教授がこちらを真っ直ぐ見ていた。


「う、そ?」


まさか見間違いではないか?
慌てて鏡まで駆け寄り、鼻が付きそうな程近くで見ても、やはり、私の後ろに立つのはスネイプ教授。
それも、眉間の皺が何時もより三割減のいやに優しい表情だ。


鏡の中のスネイプ教授は、鏡の中の私の直ぐ後ろまで来ると、あろうことかその腕を私の腰に回し、見たこともない穏やかな甘い視線を送る。
本物の、私に。



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