だが葉月にとって問題はそんなことより“些細なこと”だった。


「元々は西洋の……えと、習慣、でしたっけ?」


「conventionality(習慣)?custom(風習)の間違いではないですかな?」


馬鹿な者を見るような目で葉月を蔑むスネイプは学校の先生よろしく、きっちりと英語の間違いを諭した。
それもわざわざ教授口調で。


葉月は頭痛がしてきたことを必死に隠し平常心を保つ。
そう、これこそが彼女の原因だった。
どんな問題があっても乗り越えられると思っていた矢先、まさか外国に来て、先生……いや、教員が一番の問題になるとは誰も想像出来なかっただろう。
勿論、葉月もそうであった。


その問題の相手はさして葉月の感情を気にする事もなく、自らのペースで静かな廊下を歩く。
女性にとっては少々、いや、かなり早いと言っても過言ではないペースだ。
葉月はスネイプに頼まれた資料を落とさないようにしっかりと持ち、小走り以上の速さで、何とか彼に追い付いて行く。


「何故黒猫が目の前を横切ると縁起が悪いとされたか知っているか?」



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