このまま暗い中で一緒に消えてしまいたい。
何時か消えるだろうか?
お腹がたくさん空けば、喉が凄く渇けば。
そうすれば、僕はこのまま──
「楊ゼン」
玉鼎の声にピクリと反応した楊ゼンは、膝を抱え丸まって下を向けていた顔を反射的に上げた。
小さな洞窟だった。
普段はあまり近付かない、少し暗い洞窟。
そこが何故か気になって、無意識に足を向けていた。
すると、小さな泣き声が洞窟に響いていて、思わず肩を撫で下ろしてしまう。
ゆっくりと脅かさないように奥に進めば、ホッと安心してしまう自分がいた。
洞窟の一番奥。
小さく丸まってグスグスと泣いている、愛弟子の姿を捕らえたから。
「楊ゼン」
驚くほど穏やかにかけた声に、ピクリと反応して上げられた顔を見れば、もう安堵しか浮かばない。
「帰ろう」
手を差し伸べれば、大声で泣きながら抱き着いて来る楊ゼンに、また、愛しさを感じた。
「玉鼎、入る前に少しそこで拭いてちょうだい。部屋がベタベタになっちゃう」