アグニとファントムハイヴ家の使用人達によって、黒塗りの棺が運ばれる。
組まれる葬列のバックミュージックは、涙を啜る音。
誰もが嗚咽を堪え、悲しみに打ちひしがれて顔を下に向ける。


誰が彼の死を想像出来たであろうか。
執事、セバスチャン・ミカエリスの、死を。


棺が閉まる前の白い百合に囲まれたセバスチャンを、葉月は思い返した。


長い睫毛に乱れのない髪。
ファントムハイヴ家の執事の制服に身を纏い。
肌も何時も見ていたそれと変わらなかった。
そう、生きている時と、何一つ変わらない姿でセバスチャンが眠っていたのだ。


まるで遠い記憶を辿るように、思考が流れていく中、現実ではアンダーテイカーの手によって、黒棺が墓前に埋められた。
“執事セバスチャン・ミカエリスここに眠る”
と、彫られた墓前に。


「シエル!!」


無言の空気を割ったのは、エリザベスだった。
がばっとシエルに抱き着き、とうとう堪えられなかった声を発した。


「セバスチャンは嘘つきだわ。シエルを一人にしないって約束したのにひどいっ…」



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