本国から遠く離れた此処、英国でも。
本国ほどはっきりとしてはいないものの、季節は巡る。















ロンドンのような街とは違い、郊外に佇むファントムハイヴの屋敷からは、濁った色などではなく、空気さえよければ青い空が垣間見える事も少なくはない。


今日はたまたま朝からそのような天候で。
葉月は手早く朝食を済ませると、いそいそと部屋に戻って前から準備していたそれに、久方ぶりに袖を通したのだった。















「こんな所にいらしたのですか」


中庭に一人佇んで、空を仰ぐ女性を見てセバスチャンは声をかけた。


後ろから突如かけられた声に、振り返るとニコリと微笑む。
声に驚いたのは、葉月ではなく声をかけた本人、セバスチャンであった。


普段の葉月ならば、きゃあと可愛らしく叫び、顔を真っ赤にして慌てふためく。
その姿が見たくて、わざとそうするのだが、今日は何故かそうはならなかった。


「その格好は?」


「着物といいます」



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