清楚で従順で気がきいて、なおかつ夫を立てる。
更に、海を渡った他国で、すがる相手は夫しかいないとなれば。
手間がかかっても、可愛く爪をたてる本国の猫は愛人にして。
結婚という形さえとれば世間も文句を言わない。
そんな打算的な紳士が増えるのも当然だ。
そしてそれは、ファントムハイヴに住み込みで働いているジャパニーズの女性も。
当然その条件に当て嵌まるのである。
──面倒な問題ですね。
そう、暗い底で考えた時だった。
「僕の関係者が何だって?」
幼いが、芯のある声が二人の間を響いた。
シエルの青碧の瞳と、セバスチャンの紅茶色の瞳がぶつかる。
だがそれは、協力的な意味合いを持つものではなく、互いの胸の内を探り合う敵対するようなモノ。
先に余裕を見せたのはセバスチャンだった。
主を試すように、上がる口角に含まれる意味合い。
自身なら、この低俗な男など指を曲げる事より簡単に、亡き者に変えられる。
だが、あくまでもセバスチャンはシエルの駒でなければならないから。
どんな手法を使って男を潰すのか。
そのゲームのような駆け引きに期待をよせた。