「おれ、あんたとどっかで会ってるかな」
いや、と答えたコンラートの顔が頭から離れなかった。
ギシリと、木造の床が音をたてる。
少し離れた場所で、同じタイプの寝袋で寝る軍人を起こさないようにと気を使ったつもりだったが、ピクリと動いたのを見てしまい、申し訳なくなってしまった。
だが、こちらから確認するのも失礼な気がして、特に会話をすることなく部屋を出る。
窓から見える月を横目に、家の玄関の扉を開けた。
「どうかしましたか?」
優しい甘い声が響く。
思わずそちらに目を向ければ、コンラートが剣を立てたまま、低い視線からこちらを見上げていた。
「少し、外の空気が吸いたくて」
銀の光彩が星の光りを浴びてキラキラと輝く。
スッと細められた瞳に、少し残念だと気持ちが過ぎった。
しっかりと彼の瞳を見るのは初めてのはずなのだが、懐かしい雰囲気に駆られ胸の内がざわめいて、思わず制服のシャツをキュッと掴む。
その葉月の何気ない行動に、コンラートは立ち上がると正面から彼女を見下ろした。
「どこか身体の具合が悪いんですか?」
「え?あ、違います、大丈夫です」