有利君に手招きされて廊下の窓から中庭を見下ろした。
「結構積もってるね」
「三十センチは積もってるらしい」
成程。
雪のせいで本来のコースをやられたらしい野球小僧は、それでもなお、毎日の日課を欠かす事が出来なかったらしい。
だから廊下でロードワーク。
──迷惑な話だ。
「起こしてしまいすみません。紅茶でも頼みましょうか?」
「いらない。グリ江ちゃんが入れてくれるから」
間入れず答えた私に苦笑するコンラッド。
しかし、私はそんなコンラッドを無視して有利君の肩に手を回し。
「ねぇ、有利君。悪いと思うなら魔王様の権力を、少し、借りたいんだけど」
魔王も顔負けの、どす黒い笑みを浮かべて可愛らしく有利君を見詰めた。
本家魔王様の背筋をゾクリとさせる程、強烈に。
「な、ナンデショウ?」
「ハヅキちゃーん、朝よ!」
ヨザックはグリ江ちゃんに成り切って、葉月の部屋のドアを叩いた。
実は一目惚れしたお姫様。
所謂、ツンデレ系の彼女の世話係になるまでもかなりの難関があったが、そこは愛の力。
粘りに粘って獲得したのである。