大きな瞳を零れ落ちるのではないかというくらいに大きく見開いて、間違いがないように注意深くこちらを見てくる。
真っ直ぐで汚れを知らないそれに、思わずドキリと心臓が高鳴った。
膝を曲げ、小さなお姫様の視線に目線を合わせる。
するとお姫様は屈託のない、真っさらな笑顔をコンラートに向けた。
「ゆーちゃん、たすける、ありがと」
砂糖菓子のような甘い声と甘い匂い。
幼女特有のそれは何故か彼の心を掴んで離さない。
小さな手が彼の大きな手に触れられれば、何の躊躇いもなく、その手を握り返す。
マシュマロのように柔らかなそれに、コンラートは自身でも意識せずに軽く口付けた。
絵本の中の王子様や騎士が、お姫様にするように。
そして、まるで口説いているような甘い甘い声で優しく言葉を紡ぐ。
「貴女の為なら何でもしますよ。だからどうか……」
「葉月ちゃん、行くわよ」
美子の声に、はぁい、と可愛らしい声で返事をすると、葉月は躊躇いなくコンラートの手から擦り抜けた。