8 | ナノ
※現代パロ

「(……好きだなぁ、)」

俺は想い人を想いながら、ぼんやりと考えた。
会社にある社員食堂にて俺は働いているのだが、働いてから日は浅い。そんな俺が絶賛片想い中なのが、此処の社員であるリヴァイという人だ。どれくらい俺が本気かと言うと、仕事が手につかないくらい本気である。皿を何度割ったことか…。この前は和食定食を頼んだ社員に箸をつけるのではなく、フォークとナイフをつけてしまったりと仕事にならないくらい重症だったりする。
彼は、昼時で混雑する時間には決まって食堂には来なく、昼時が過ぎて人が少なくなった頃合いを見計らってか食堂に来ていた。前に、同じ食堂で働くおばさんから聞いたことがあるが、どうやら俺が此処で働くようになったくらいから食堂を利用しているらしい。ま、まさか…俺が働く前は彼女さんに手作り弁当だったが俺が働いて直ぐに別れたとか…?!

「……あーあ、勿体無いなぁ」

もしそうだとしたら、彼女さんはかなり勿体無いことをしたことになる。彼女さんが別れを切り出しても、その逆だったとしても、だ。

「…何が勿体無いんだ?」

ビクッ。一人言だったので返答はないはず。なのに返ってきて、慌てて見やれば今正に考えていた相手だったのだ、吃驚するに決まっている!対して、彼はさっきから何ブツブツ言ってやがると言っては御機嫌斜めだ。
時計で時間を確認すれば、十五時前。そういえば今日は目の前の彼は食堂に来なかったな、と考えていたがリヴァイが手に握っているものを見れば此処に来た理由が分かった。

「(……マイ箸達を持って来たってことは、何か食べに来たんだな…)」
「会議が長引いて来る暇がなかった。…食堂はもう閉まってることは分かってるが、何かないか?」

食堂は昼間だけ開いていて、十四時くらいになれば閉めてしまう。今日は偶々俺は此処に残っていたけれど、普段ならばいなかった。だから食堂には俺と、彼だけしかいない訳でして。
少し待てますか、緊張して頭が真っ白な俺にはこれだけ言うのが精一杯。返事を待たずに厨房へ引っ込んだ俺は纏まらない思考で一杯な頭で何とか今作れるもののレシピを引っ張り出した。ふと、フライパン片手にうんうん唸ってる俺に後ろから声が掛かる。既に席に着いたリヴァイの声だった。彼はテーブルに肘をついては疲れているのか、いつもの、部下を叱るような気迫あるような声色ではない。

「……俺がテメェのところに食いに来てる理由、知ってるか」

知りません。俺の口がそう動く前に、リヴァイがそれを遮るように言葉を続けた。

「テメェに、会いに来てんだよ。それくらい察しろ、愚図が」
「(ま、マジっすか…、)」
「あ?悪いか?」
「い、いや…嬉しい、です」

じゅう、溶いた卵をフライパンに流してはふんわりと炒めたご飯を包んでは皿に移す。ケチャップで描いた字、この想い、届け!
彼の前に置いたのはオムライスで、マイ箸達があるから敢えてスプーンは出さなかったけれど。描いた字がやっぱり目に入ってはリヴァイが俺に視線を移してきて。だって、抑えていたのにストッパーを外すようなことを言うからいけないんだ。ケチャップで描いた字は。

「……貴方と初めて出会った時から、好きでした」

好きです。描いた字は四文字で、俺の口から聞いた告白とオムライスに描いた告白に彼は笑った。

「それじゃあこれからは俺の飯、作ってくれよ」
「…はい!明日から作りますね」

次の日、リヴァイは食堂には来なかった。その次の日も。けれど、その代わり。

「今日は自信作です!」
「…今日も、の間違いだろう」
「あはは、そうかもしれません」

彼と、一緒に食べるようになりました。



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